【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
彼は愛想笑いを浮かべる私の手も取り、
「梢サンは、お父サマを亡くされお困りデスか? それならウチで働きマセンか?――Oh!!」
でれでれと鼻の下伸ばしてた男は、頬に銃口突きつけられ、大慌てで離れた。
「俺の女に手ぇ出してんじゃねえよ。とっとと話進めろ」
尾形さんが殺気を放ちながら、銃を向けていた。
……自分で話を持って来といて、とっとと帰りたそうだな。
しかし『俺の女』かあ。うーむ。ノーコメント。
オッサンも咳払いし、
「It's a jokeデス。では取引を始めまショウ」
かくて買い取り査定が始まった。
もちろん未来の品を、何でもかんでも売りに出すわけがない。
『なるべくこの時代にもあるもので、極端に関心を引かない物』『廃棄後は自然に還り、第三者の手に渡って利用されたり後世にオーパーツとして残ったりしにくい物』を選んで出してる。
だから、そこまで珍しくは思われない……はず。
だったのだが。
「とても興味深いデス……」
西洋人のオッサンは、私が次々にリュックから出すものに、ため息をついた。
私は一つ一つ説明する。
「こっちが乾パンとチョコレート、タオル、ガーゼに包帯、軍手、トイレットペーパー……」
他にも防災用品色々。
「Great! Amazing! 」
あかん。この時点で頭を抱えたくて仕方ない。
何でこのオッサンが日用品を絶賛してるのかというと、物が違いすぎるのだ。
例えばトイレットペーパーのふんわりエンボス加工。軍手やタオル類に使われてるポリエステル、ガーゼや包帯の不織布……全て、この時代には開発されてない製法だ。
乾パンやチョコレートなどの食品類は? 味の差なぞ言うまでもなかろう。
牧場主のオッサンは一つ一つを手に取り、目を見張っていた。
「Incredible……梢サン、いったいどこの国がこんな良いモノを? 日本のショクニンが作ったのデスか!?」
「すみません。父の遺品ですので、私も詳しいことは全く分からず……」
「そこをどうにか教えて下サイ!!」
「え、ええと……」
詰め寄られかけたが、
「で、いくらで買うんだ?」
尾形さんが割って入る。銃を意味ありげにチラつかせたのは絶対ワザとだろうな。