【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
尾形さんは、裸に浴衣一枚だけを羽織った格好だ。
筋肉質な身体と鎖骨がよく見える。
「こっち来い」
「はあ」
肩を抱き寄せられる。夜風は多少冷たいし、こっちも素裸に浴衣一枚。くっつくと、ちょっと暖かくなった。
尾形さんの肩にもたれる。
そのまま、しばらく二人で月を見ていた。
そして尾形さんが口を開く。
「町の近くに西洋人がやってる牧場があるそうだ」
「え?」
甘い雰囲気から現実に戻される。尾形さんは月を見ていた。
「珍しい品なら高値で買い取るらしい。明日、そこに行くぞ」
「外国の人に、外国の品をわざわざ売るんですか?」
「今どき金を持ってるのは外国人だ。それに、こっちの成金どもにおまえの品の価値は分からん。
身寄りの無い小娘と下に見て、買いたたかれるだけだ」
「ありがとうございます。じゃ、明日その牧場に行きましょう」
「梢」
尾形さんが言った。
「それで首尾良く大金を得られたとして、まだアイヌの女占い師を探すつもりなのか?」
「はあ、まあ……」
尾形さんは難色を示してるっぽいので、あいまいに応えておく。
「若い娘が一人で、大金持って、本気でそんなことが出来ると思ってるのか?」
うーるーさーいー! 説教タイムなら別の機会にして下さいな!
私だって危険だって分かってるけど、こっちにはこっちの事情があるんだから!
文句を言おうとしたら、
「……もう少し、ついていってやろうか?」
「あ?」
あまりにも意外な言葉に『は?』ではなく『あ?(何言ってんだこの人)』的な反応になってしまった。
「……何だよ、その顔は」
山猫もみるみる機嫌を悪くし、眉根を寄せた。ごめんなさい。
「いやだって尾形さんは、杉元さんたちに追いつかなきゃいけないんでしょ?」
「杉元たちは、俺がいようがいまいが気にしねぇよ」
あー、うん。杉元さんは、尾形さんを毛嫌いしてたもんなあ。
尾形さんがパーティーを離れるとき、杉元さんは清々したという顔で、
『二度と戻ってこなくていいんだぜ』と言ってた。
ちゃんと尾形さんを心配してたのは、アシリパさんだけだった。
「ふ。呉越同舟ってやつですか。徳川埋蔵金を探すのも大変ですね」
「……アイヌの金塊だよ。興味のないことにはどんだけ頭が弱いんだ、おまえ」
罵倒された!