【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
そして、身体がぶつかる音が一気に早くなり、私は追い詰められる。
「ぁ……ぁ……あ……」
「……っ……っ……!」
「……――――っ……!」
呆気なく絶頂を迎え、解放され、冷たい床に倒れ込んだ。
「……梢」
息を整えながら、野郎が覆い被さって、背中に口づけてきた。
私はとろんとした目で、精液がお湯に混じって流れていくのを見ていた。
…………
…………
仲居さんはニコニコして、海鮮料理のお膳を置いてくれる。
「奥様、お疲れですか?」
「こいつ、久しぶりの温泉だからって張り切って長風呂しやがったんだ」
「あらあら。堪能して下さったんですね」
楽しんだのはクソ猫だけですけどね!!
尾形さんは浴衣姿であぐらを組み、酒を飲んでいる。
その素振りに疲れは一切見られない。
後で殺すっ!! 夜は絶対に相手をしないからなっ!!
そう思いながらも、表に出すことは出来ず、私は煮物料理を食べていた。
――ん?
ある皿の煮物を食べたとき、ふと妙な歯ごたえがした。
何だこの肉? 魚でも鶏肉でも牛肉でもない。けどどこかで食べたような……。
尾形さんも同じ皿の料理を食べ『?』というお顔だった。
「あの、これ、何の肉ですか?」
空のお膳を下げる仲居さんに聞いてみた。すると彼女はふふっと笑い、
「アイヌの猟師から仕入れた、珍しいラッコのお肉です。
これを食べると夫婦仲が良くなると評判だそうですよ」
そう耳打ちしてくれた。まあ迷信なんだろうが。
でもラッコかあ。ラッコ肉……?
どこかで聞いたような。小樽にいたときとか食べたことがあるだろうか。
いや覚えがない。でもこの味、どこかで……。
――最近、以前あったはずのことを思い出せないときがある。
不安を覚えて、尾形さんを見たが。
「…………」
尾形さんはラッコを食べ終え、えらく熱いまなざしでこちらを見ていた。
え?
…………
…………
「梢……」
分かってはいたが、敷かれた布団は一つであった。
私は食後に改めて風呂に入り、シャンプーとボディソープで汚れを完全に洗い流しスッキリしてるが。
「良い匂いがするな、梢」
……普段なら、あまり言いそうにないことを言い、抱きついてくる猫がいるんだけど。