【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
…………
…………
「……ん……」
遠くで鳥のさえずりが聞こえ、目を開けた。
「???」
動けない。最初は自分の状況を把握出来なかったが。
耳元で低い寝息が聞こえた。
「…………?」
ようやく状況を把握した。
私は後ろから尾形さんに抱きしめられ、寝ていたみたいだ。
どうりで枕がごわごわするワケだ。
狙撃手殿の、鍛え上げられた硬い腕枕であった。
そして毛布がわりに、すっぽり外套をかけられていた。硝煙くさいなあ。いつものことだが。
私はどうやら、終了後に眠ってしまったらしい。昼間の旅の疲れと、昼夜の連戦があったし。
こっそり身じろぎするが、最低限の後始末はされているようだ。
ほーっと息を吐き、そっと尾形さんの手をどかす。
「…………」
起き上がり、着衣の乱れを直しながら、尾形さんを見下ろす。
そして彼が私と一緒に、銃も抱えて寝てたことに少し呆れた。どれだけ警戒心が強いんだ。
けど、今の寝顔はどこか穏やかだった。
「ん……」
急に私のぬくもりが消えたからだろうか。
尾形さんの手が、私を探すようにのそのそ動く。
その仕草にふふっと笑ってしまう。
あ。そだ。
私は尾形さんを起こさないよう、そーっとリュックに忍び寄り、ごそごそと中を漁った。
そして一番奥からスマホを取り出し、久々に電源をつけた。
いつ尾形さんが起きるか分からない。
私は画面をろくに見ず、カメラだけ起動させ、尾形さんににじり寄る。
そして寝顔を画面に入れ――ピロリン♪
あ。シャッター音が思ったより大きい。
「何の音だ?」
敵が眉根を寄せ、薄目を開けた。
私は画面を確認する暇もなく、大慌てで電源を落とした。
――電源を落とす寸前、スマホの通知ランプが光ってた気がしたが、ンなはずないか。完全圏外なんだし。
「今のは何だ。聞いたことのねぇ音だが」
のっそりと身体を起こしながら尾形さんが聞く。
「遺品の舶来玩具の一つです♡ 変わった音が鳴って光も出るんですよ♡」
さりげなくリュックの奥にスマホを隠し、必死に作り笑い。
尾形さんは寝起きで少々機嫌が悪いのか、頭をかいた。
「売り物をむやみにいじるな。壊れたらどうするんだ」
と、伸びをする。
「はーい」
ごまかせたことにホッとし、私は笑った。