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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第7章 尾形さん3



 ちなみに、杉元さんたちの行き先は分かってるらしい。
 なので私と別れたら、その後は馬を借りるなりして、彼らを追いかけるんだそうだ。
 無職の人は時間があっていいなあ。

「おい」
「――はっ!!」

 気がつくと山猫が目の前にいた!!
 機嫌が急降下してる! 猫め!!

「どうかいたしましたでございましょうか、尾形上等兵殿!」
「また頭の中で、俺のことを悪し様に罵ってただろう?」
 いだだだ。前髪つかまないで下さい。暴力ダー。
「え!? 尾形さん、何で私の心が読めるのですか!?」
 手を口に当て、驚愕に目を見開く。
 尾形さんはニコニコニコニコと、
「カマカケに引っかかる頭の悪さも健在で嬉しいぜ。おら来い、新兵」
 
 どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。ずりずりと手首を引っ張られ、山道から離れて岩陰の方に。

 いやちょっと待ってよ。私第七師団では才女扱いで一目置かれ出してですね……あーれー。


 そして足を抱えられ、容赦なく突き上げられる。
 草いきれのむわっとした匂いの中、ぐちゅ、ずちゅっと、肉がぶつかるいやらしい音が響く。
 私は胸をぽろんと出したあられもない姿で、
「あ……っ、おが、た、さん……む、り、もう……!」
「ほら、声が出てねえぞ。もっと足開け、雌猫!」

 岩陰で衣類剥ぎ取られ、真っ昼間から責められまくるという憂き目にあったのだった……。

 …………

「最低です。先は長いのに、いきなりこういうので時間つぶすとか」

 私は尾形さんの外套を頭からすっぽりかぶり、草むらに座って愚痴る。
 一方、山猫は私の肩を抱き寄せ、

「おまえの身体と、遺品目当て」
「は?」

「タダで抱ける女と金。それが俺が送ってく理由だ。他に何かあるのかよ」
「…………」

 いやあ、いきなりそんな『らしい』こと言われてもさあ。
 
 私は外套のフードを上げ、尾形さんをまじまじと見る。
 彼も私を見ていた。

 モノや人への執着など、カケラも無さそうな顔。
 その目には、いつも変わらぬ虚無が映っている。
 
「で。実際のとこはどうなんです?」

 すると尾形さんはフードをつまみ、すぽっと被せる。

 うわ、視界がふさがれ尾形さんが見えん!!

「俺にもよく分からん」

 独り言みたいな声が聞こえた。

 なぜかその言葉だけは、ウソではない気がした。

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