【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
「梢……」
尾形さんはそれはそれは優しい笑顔で私を見たのであった。
「いだだだだだだだだ!! 骨が折れる勢いで手首をひねらないで下さい!!
あとですね! 真面目に私のデレを引き出したいなら、普段からそういう行動をお取りになればいいでしょうが!!
だから痛いって!! 謝りますから!! その笑顔止めて!! ひいい! 生意気言ってごめんなさいいいいー!!」
なお私が悲鳴を上げているというのに、
「なあ杉元、『デレ』って何だ?」
「さあ? 先制攻撃とかそういう意味じゃないのかな? アシリパさん」
全然違う!! 誤報を訂正したかったが、尾形さんの攻撃がヘッドロックに切り替わり、私は青息吐息でございました。
…………
そして十分後。
「すごい。あれっぽっちの塩でもこんなに美味しくなるんですね!! 超美味しいですよ、アシリパさん!!」
「こんなに入れても十分美味いんだな。ギョウジャニンニクのうま味も引き出されてる! ヒンナヒンナ!!」
『…………』
自分が食べる器にだけ、塩を追加すればいいだけの話であった。
あとアシリパさんと器を取り替えっこして、それぞれ美味さに刮目した。
どっとはらい。
…………
そして、私とアシリパさんは何だかんだで仲良くなり、賑やかな食事も終わった。
だが私は殿方の格好を見て眉をひそめた。
「尾形さん、また荒事をされてたんですか? ほら、外套を脱いで下さい。すぐ縫いますから」
「…………」
いつものことなので、尾形さんは無言で外套を脱いだ。
明治時代に長居をし、針仕事もまあまあ出来るようになった。
私は針と糸を出し、ビシッと光にかざす。
牛山さんは笑い、
「すっかり手慣れたもんだ。まるで尾形のかみさんだな」
通常ならここで顔を真っ赤にし『何言ってるんです牛山さん、きゃ♡』となろうが、私は現実的だ。
「馬鹿言わないで下さい。牛山さんも何で柔道着で旅をされてんです。
ほつれてるとこ、縫っちゃいますから脱いどいて下さい」
「おお、悪いな。梢さん!」
「…………」
「何ですか尾形さん。何か言いたいことがあるんなら言えばいいでしょうが」
「…………別に」
尾形さんは謎の不機嫌オーラをかもし出してくる。
ホントに猫だなあ!!