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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第7章 尾形さん3



 現代の味付けは濃い。
 ある人が砂糖断ちをし、数ヶ月後にスイーツを食べたとき、そのあまりの甘さに驚愕したのだという。

 二十一世紀に生きる我らはそれくらい濃い味付けに慣らされ、しかもその自覚がないのだそうな。恐ろしや!

 それはそれとして、塩だ塩!! しょうゆもみりんも酒も貴重品なら、せめて塩を入れさせて!!

「入れない!」
「入れます!」

「あの~」

 睨み合う私たちを見かねたのか、恐る恐ると言った感じで杉元さんが声をかけてきた。

「あの~、梢さん。ここはアシリパさんに任せた方が良いと思うよ。
 この子はこういうのにすごく詳しくて、一番美味しい食べ方を知っ――」

「ほら見ろ梢! 杉元もこう言っているぞ!!」
 顔を輝かせるアシリパさん。

 ほほう。鹿の脳味噌を嬉々として食ってる奴の意見を参考にしろと?
 個人の意見にございます。伝統文化を貶める意図は何らございませぬ☆

 すると(多分さっさと食べたいっぽい)牛山さんが、
「俺は梢さんの味付けが好きだぜ。濃いって言う奴も多いが、俺はあのくらいの方が――」
「よーし、二対一!! 多数決により私の味付けが勝利と決定しましたね、アシリパさん!!」
 隠れ家のおじいちゃんたち、薄味派だったからなあ。

 アシリパさんにビシッと指をつきつけ、鍋に追い塩をしようとしたが、

「いやちょっと待て。二対一って、俺を勝手に味方に入れてるんじゃねえだろうな?」

 尾形さんが低い声を出す。私は目を剥き、

「ええ!? 尾形さんは私の味方ですよね!? 違うんですか!?」
『今ここで否定すれば命の保証はいたしかねる』という怒気を込め、尾形さんに問いかけたのだが、

「…………」
”正直どっちでもいいが、その決めつけが気にくわない”という感じの沈黙であった。面倒くさ!

「尾形さんは私の味方ですよね?」

 私はそっと、孤高の狙撃手の手をつかんだ。

「私、知ってます。尾形さんはいつも冷たいけど、最後は私の味方をして――くれてない時の方が多かった気もするけど。
 でも本当は優しい――のかどうかかなり怪しいと思うけど。
 だけど私はいつだって尾形さんのことを殺――じゃなくて”大丈夫かなあこの人”みたいに思って心配しています!」

『…………』

 あ。全員沈黙してる♪

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