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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第7章 尾形さん3



「すごいな。尾形がこんなに感情的になるなんて」

 アシリパさんが目を丸くしてた。尾形さんはムッとしたように、
「なってねえ。こいつが、いちいち人の感情を逆なでしてくるからだ」

 ムスッとする尾形さんの隣で、牛山さんは腕組みをし、

「何で今まで便りを寄こさなかったんだ?
 あんたから連絡があれば、こいつも勝手にはぐれることは無かった」
 文句を言いたげな尾形さんを無視して、そう言った。

 こっちにはこっちの事情があるんですよ。
 夕張到着後は、月島さんに会うことで頭がいっぱい。
 その後はズタボロにされ、外出不可能だった……なんて言えるか!

 とりあえずこの場はごまかすしかない。

「尾形さん。心配かけてごめんなさい。捜してくれていたと知って、本当に嬉しかったです」
 きちっと背筋を伸ばし、お礼を言った。すると尾形さんはやっと顔を上げ、

「話をそらすな。で、今までどこにいたんだ?」
 ちっ。

「大冒険の末に夕張にはたどり着いたんですが、暴漢に襲われ大怪我して療養してたんですよ」
「どこで?」

「その、お父様のご家族様に無理を言って置いていただいて土間でコキ使われておりました」
 ヨヨヨと泣き崩れた。
 尾形さんは私をじっと見ている。ウソだと思われてるな。
 でもケガしたのは本当だし。

「そっかそっか。苦労したな梢さん。だがもう大丈夫だぞ」
 何がどう大丈夫なんだろう。でも牛山さんにわっしわっしと頭を撫でられる。
 そのとき、大音量で腹の虫が鳴った。牛山さんからである。
 さすがに大の大人は気まずげにし、空の鍋を見て、
「…………何か残ってねえか?」
 と私たちを見る。

『ない』
 非情に応えるアシリパさんと杉元さん。

 ――あ。私、チョコレート持ってるけど……。

「牛山さん、私――」
「よせ」
 低い声がした。尾形さんだ。

「ん? 何かあるのか? 梢さん」
 キラキラした目でこちらを見る牛山さん。
「明日、鹿を狩っていただければ美味しい鍋をお作りいたします!」
 グッと親指上げる。牛山さん、みるみる『しょぼーん』と肩を落とすが、
「そうだな……梢さんの鍋、美味いからな……」
 と力なくフォローしてくれた。優しいなあ。

「よし! 明日に備えて寝るぞ!」

 アシリパさんが言った。ホントに何なのこの子。

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