【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第7章 尾形さん3
尾形さん。山歩きの訓練中にトラブルで生き別れ、それきりだった。
「久しぶりだな、梢。夕張に行きたいとは聞いてたが、本当にたどり着いていたとは思わなかったぜ」
「本当に知り合い同士だったのか?」
アシリパさんが私と尾形さんを交互に見る。
私は尾形さんを見た。奴は笑っていた。
「元気そうだな。だがな、生きてたなら便(たよ)りの一つも寄こすのが筋ってもんじゃねえのか? ええ?」
怒ってる。それもマジギレ寸前だ。
なので私はとびきりの笑顔で、
「奇遇ですね、尾形さん。観光旅行ですか?」
「よし死ね」
奴は銃を構えた。アシリパさんは本気と見たのか慌てて、
「尾形、止めろ! 杉元おぉ!!」
――中略――
わたくし、大はしゃぎである。
「牛山さん! お久しぶりです! お会い出来て嬉しいです! もう二度と会えないかと思いました!! あ!! またアレやってもらえます!?」
「おう、いいぞ! ほら高い高ーい!!」
私、キャッキャと喜び、空に放り投げられた。
あの後、尾形さんに続いて牛山さんも現れたので、その場は収まった。
「土方(ひじかた)のとこで働いてた子? おまえら、そんな話は一度もしてないだろ?」
転んで出来たすり傷を舐めながら、杉元さんが仰る。
「全員とっくに死んだと思ってたんだよ。ろくに旅経験もない女が、大した荷物も無く山で遭難したんだ。
まさか生きてこんな場所にいると思わねえだろ?」
ぶっきらぼうに言い放つ尾形百之助。牛山さんは私を支えて下ろしながら、
「梢さん、許してやってくれ。あいつも小樽を出る間際まで山中を捜してたんだ」
「……余計なことを言うんじゃねえよ、牛山。何でこいつに許してもらう必要があるんだ」
殺気のこもった目で牛山さんをにらむ尾形さん。
事情はさっぱり想像つかないが、この四人は一緒に旅をしているらしい。
「本当のことだろう? 道中に立ち寄った町でも、梢さんに似た背格好の娘を見かけたら、走って顔を確認したりして――」
「牛山!!」
私は地面に下りながら尾形さんに、
「そうですか。無駄な努力でしたね」
「人の心が無いのか、てめえは!!」
あんたが言うか。
「すごいな。尾形がこんなに感情的になるなんて」
背後では、アシリパさんが目を丸くしてた。