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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第7章 尾形さん3



 そして、珍客を迎えての夕食となった。
 アシリパさんは、私の素人焚き火をテキパキと手直してくれた。

「梢は下手だなあ。こういう風に木を組んだ方が、熱が逃げず長く火が燃えるぞ」
「ども」
 焚き火のプロ違ぇし。

 ……この人たち、以前にどこかで会った気がする。
 でも思い出そうとすると記憶があやふやになる。
 というか腹減った。

「さっき連れの方を捜してるって言ったけど、捜さなくて大丈夫なんですか?」
 するとアシリパさんは言った。
「辺りは暗くなったし、一箇所に留まった方がいい。
 この焚き火を見て向こうが移動してくるかもしれないからな」
「そうそう」
 と杉元さんもうなずく。まだ増えるのかよ。
 そして杉元さんは、
「アシリパさん、ウサギの皮をはいだよ!」

「よし杉元、梢! ウサギをチタタプにするぞ!」
「はい、アシリパさん!」

 ……何なんだ、この二人。どういう関係なんだ? 
 恋人というには歳が離れてるし、保護者というにはアシリパさんが主導権を握っているように見える。

 ……あと今この子、謎の言葉にサラッと私を混ぜなかった?

「――て、全部粉々にするの!? 血抜きとか内臓取ったりは!?」
 アシリパさんが木のまないたで、皮を剥いだウサギを『そのまま』切り刻み出したので仰天した。
『しない』
 と口をそろえる二人。えー。

 だがアシリパさんは、軽快にウサギを切り刻んでいく。
 その慣れた手つきに感動すると同時に、動画を撮りたくて仕方ない。
 ……でも何で叩きながら『チタタプ』言ってんだろ、この子。
 と思っていると、アシリパさんが包丁を私に持たせた。
「次は梢がやれ」
「え!? 何で私が!?」
「チタタプは皆で叩くものだからだ」
 平然と言うなよ。
「叩くとき、ちゃんと『チタタプ』って言うんだよ、梢さん」
 なぜ真剣な目で言うんだ、杉元さん。
「そ、そうですか。チタタプ、チタタプ……」
 指示通りに『チタタプ』言いながら、渋々叩きだした私であった。
 アシリパさんは私の手つきに目を輝かせ、

「初めてにしては上手だな、梢!」
「すごいね、梢さん。アシリパさんに褒められたよ!」
「ありがとうございます! 嬉しいです!!」

 何 な ん だ こ の 二 人 は 。

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