【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第6章 月島軍曹2
「いや、その前に引っ越しか。てかお金、どれだけ残ってたかなあ」
スマホは私がいない間に、充電が0%になって勝手に電源が落ちていた。
だがしばらくスマホがない生活をしていたためだろうか。
スマホを放置して使わないという、信じられない生活を続けていた。
「でも万が一、万が一、電話がかかってきてるかもしれないし」
スマホを充電コードにつなぎ、起動画面を立ち上げる。
ほーら、やっぱり着信ゼロ。さて、口座を確認――。
「???」
私は違和感に気づく。
何だコレ。ネットワークに接続していないぞ。
「ええ~?」
契約会社から『料金未払いのためサービスを一時停止』する旨のメッセージが届いていた。
どうやらしばらく前から、スマホは単なる板になってたようだ。
「い、いや、何で!? まだ口座にお金は残ってるはずじゃ――」
色々な支払いが重なったのか?
こんなことってあるのか。明日、ショップまで行かないと。
やっぱ何もかも便利な夢の世界じゃないっすよ、月島さん。
「……うわぁ」
ついでに受信メールを確認すると、そちらは着信と逆だった。
三桁を軽く超える新着メールがあった。
サービス停止前でこれだから、下手するとまだまだまだ来てるかも。
「この庭のこと、あちこちの超常現象の団体とか、オカルト系SNSで相談したからなあ」
頭痛をこらえながら、何通か開いてみる。
『あなたの話を読み本物と確信しました。私が封印に行きますので家を教えて下さい』
『詳しくお話をうかがいたいので、ホテルで待ち合わせしましょう』
『教団で修行を積めば、怪異を祓うことが出来ます。まずは修行の前金五百万円を――』
「だああああああ!!」
スマホを投げそうになった。やっぱネットって、ろくな奴がいねえ!!
削除だ、全削除!!
「…………ん?」
全削除にOKを押す寸前に指が止まる。
『梢さんへ』
件名はそれだけ。だが唯一、私の実名が書かれていた。
かなり前。日付を見ると、この庭のことを相談し始めた直後に来たものだ。
DMメールに紛れてたのか気がつかなかった。
でも実名で相談なんて危険なことは、一度もしなかったはずなんだけど。
「いやでも、私の本名と顔写真はネットに出回ってるしなあ」
一応、開いてみた。