【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第6章 月島軍曹2
すすすすみません!! お高い軍服に染みをををを!!
猛烈に頭を上下スイングさせる私に、鶴見中尉は、
「落ち着いたかね。茶を飲みなさい。ひどい汗だ」
「梢、大丈夫か? ほら飲め」
鯉登少尉が心配そうに(今度はちゃんとした)茶を差し出す。
……顔が若干不満そうに見えるが気のせいか?
それを飲み、どうにか落ち着いた……けどちょっとフラフラするなあ。
「鶴見中尉殿、少し寝かせた方が良いのでは?」
「梢ちゃん、ごめんな」
ん?
気がつくと酒宴は一旦中断され、第七師団の皆さんが心配そうに私を見ていた。
どうやら度数の強い酒を飲み、一時的に意識を失ったらしい。
鶴見中尉が私を横にさせ、様子を見ていたそうな。
そしたら私がガバッと起き上がり、鶴見中尉にすがって泣きだしたという。
穴があったら入りたい。顔から火が出そうだ。
しかし何つう生々しい夢だ。
江渡貝が私を桜の木の下に埋めるとか悪趣味なことを言ったからだ!!
だけど夢で見たあの屋敷、どこかで見たような……。
…………あの古民家じゃね?
ゾッとした。
「梢。本当に大丈夫か? 顔色が真っ青だ」
身体をガタガタさせた私に、オロオロしてる鯉登少尉。
すると、誰かがスッと私の肩を抱いた。
「一度、横になって休んだ方がいい。
鶴見中尉殿。戻って梢さんを寝かせ、江渡貝の様子も見て参ります」
「分かった。頼む」
「はっ!」
月島さん!! ごく自然に現れ、私を立たせてくれた。
「それなら私も――」
と立ち上がりかける鯉登少尉。
「いえ。彼は神経質で、家に知らない者が入ると集中が妨げられるそうです。作業中は止めた方がよろしいでしょう」
彼はそう言って鯉登少尉を退ける。
私は鶴見中尉や皆さんに頭を下げ、ちょっとふらつく足で場を離れた。
そして感慨深く噛みしめる。
…………やっと。やっとだー!!
二人きりになれた。帰れる!!
月島軍曹は歩きながら、ふところから荷物を出して私に手渡した。
私の私物入れだ。気が利いてるなあ。
月島軍曹は渋い顔だ。
「梢さん、場を離れるためとはいえ、あまり危ないことはしないで下さい」
い、いや作戦でどぶろくを一気飲みしたわけでは……。