【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第2章 月島軍曹&鯉登少尉
「でも大事なことを教えていただきました。
これで、これから好きなときにあちらに行くことが出来ますね!」
明治時代の北海道! 危険な目に遭ったが面白かった。何てロマンあふれる世界!
すると月島さんが、
「二度としてはダメだ!! 屋内や他の者のいる場所から戻れる保障は無いし、眠らされたり売られたりしてからでは遅い!」
そして私を振り向かせ、両肩をつかむ。
「あんな危険なことをして俺に会いに来なくとも、俺はまた貴女に会いに行くから!!」
は?
……。
…………。
『梢に会いたいから行く→梢も自分に会いたいから北海道に来てくれた』
どうも月島さんの中ではそういう図式らしい。
そういえば、他にも古民家に来てる人がいることは、話したことがなかったっけか。
だが、この場でそれを言わない方がいい、という程度の空気読みは出来た。
つか行き来する判定、けっこうガバガバなんだな。まあSCPなんてそんなもんか。いや知らんけど。
「わ、分かりました。なるべく行かないようにします」
「なるべく、ではなく絶対です! 鶴見中尉はしばらく貴女を探すでしょう。
どうか私を……あまり心配させないでほしい」
そう言われて、今回いかに月島さんに迷惑をかけ、彼の立場を危うくしたかと思い出した。
「ごめんなさい。約束します。月島さん、ありがとうございました」
「……良かった。安心した」
それだけ言って手が離れた。
「月島さん。本当に――」
改めてお礼を言おうと顔を上げた。
だがその先には誰もいなかった。北海道の冬の山林は消え、雑草生い茂る草むらが見えるだけだった。
私はホッと息を吐き小さく呟く。
「また、会えますよね」
会って何をするでもない。彼らが何をしているのかも知らない。
でも、疲れたとき――私みたいな知人以下の存在に会いたいと欲するほど疲弊したとき、ここにまた来て、お茶を飲んで欲しい。
そう思った。
…………
…………
「やあ! またお会いしましたな、お嬢さん! ほう! ここが貴女のお屋敷ですか!!
ところでおうちの方とお話をしたいのですが、ご在宅ですかな!?」
やった~~!
つるみちゅういが お庭に遊びにくるようになったよ!!
「帰れっ!!」
――END