【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第2章 月島軍曹&鯉登少尉
「私の家が分かるんですか!?」
私でさえ、今、自分がどこにいるか分からないのに!
「何で!? どうして!?」
つかみかからんばかりに言うと、月島さんは目をそらしながら、
「……あなたの庭に何度か行き、あそこに行くにはコツがあるのだと知っています」
さっきより言いづらそうに、月島さんは言った。
そうしているうちに、何だか風が温かくなってきた。
あれ? 気がつくと靴は雪ではなく草を踏んでいた。
何だか森が開けて――。
「あ!!」
目の前にはお世話になってる古民家があった!!
よ、良かったー!! 二度とたどりつけないかと思ったー!!
「良かった。本当に良かった」
「……願望です」
生け垣にすがりつき、安堵している私に、月島さんがボソッと言った。
「最初は偶然にたどり着きます。夢か幻かと思うが、何度か行くうちに行くための条件があるらしいと分かる」
「へ?」
「ここにたどり着きたいという、願望のようなものが必要らしい。
最初は休みたいとか何か食べたいという簡単な願望で来ることが出来るが、そのうちにもっと強いものが必要になる」
「強い……」
「とにかく、ただ行きたいと。あ、あ、会いたいと。心に強く……強く願うと――どうやら道が開けるようなのです」
月島さんは耳まで真っ赤にしていて、顔を隠すように軍帽を被り直す。彼らしくもなく言葉をにごし、
「だからその、つまり……その……」
私はポンと手を叩き、
「ああ、なるほど。常連の店に行くとかそういう感じですか!
そりゃ何度も来てると、店員となじみになって、おしゃべり目当てで行ったりしますもんね。はははは!」
そこまでして休みたいとか、月島軍曹もストレスがたまってるんだなあ。まあ上司が『アレ』だもんなあ。
「あ……ま、まあ、そうかもしれませんね。は、ははははは……」
あ。やっと私を見てくれた。
だが笑いが乾いてる気がするが、気のせいか?