【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第6章 月島軍曹2
※夢主への暴力描写注意
月島軍曹が目を押さえてうめく。
その間にやっと、私は身体の自由を取り戻した。
――――っ!!
起き上がり横をすり抜け逃げようとした――が、狙ったような正確な蹴りが、私の膝の後ろに決まる。
鍛え上げた蹴りであった。膝が後ろから粉々に砕け散るかと思った。
私は吹っ飛び、派手に台に激突した。大きな音を立てて剥製が落ちた。
なお、ぶつかったのは折られた腕の側だったため、痛みだけで絶命するかと思った。
意識を失う寸前だったけど、私はまだ動いていた。生きていた。
そして手を伸ばした先に、スプレーボトルを見つけた。
つかもうとしたが、鋲を打ち付けた軍靴に――まあ、もろに手をつぶされた。
どんだけ痛いか分からない諸氏は、誰かにコンクリートブロックを手の上に落としてもらうといい。
全体重をかけて踏まれたのだ。
ついでに胸ぐらつかまれたかと思うと、容赦なく頬を殴られた。スプレーは血とともに、どっかに飛んでいく。
どうやら反撃を受け、迷いを完全に断ち切った方向らしい。
月島軍曹は私を仰向けにして床に押さえつけ、銃剣を抜く。
ダメだ。意識がもうろうとして、もう……。
首筋に刃の先が触れる。
ダメだなー。今度こそゲームオーバーだー。
インカラマッさん。やっぱカムイじゃないじゃんか、私。
剥製になるためカムイの庭から遣わされたっていうのなら、さすがに泣くんですが。
そのとき、バタンと部屋の扉が開いた。部下っぽい人が、
「月島軍曹、大丈夫ですか!?」
部屋に光が差し、月島軍曹の顔が見えた。
月島軍曹も、間近で私の顔を見た。
「…………え…………?」
血だらけで髪は乱れ頬は腫れ、全身が色々凄まじいことになっている。
でも分かったらしい。
自分が今にも殺そうとしてる、血まみれでズタボロの小娘が誰であるのか。
「梢……さん……?」
……この時代に慰謝料ってあったっけかなあ。
そう思いながら、私は意識を手放した。