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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第6章 月島軍曹2


※夢主への暴力描写注意






 腕を折られた。
 痛みは一瞬後に来た。

 声が出ていたら、家の外まで響く悲鳴を上げていただろう。

 もう冷静な判断は何も出来ない。
 私は痛みでメチャクチャに暴れ、余計に苦痛を増やした。
 だが実際には、私は月島軍曹に身体を絡め取られたまま、一歩として動けていなかった。

 そして側頭部に冷たい銃口を感じた。

「……遺体は敬意を持って扱わせ、いずれ経を上げ埋葬させると誓う」

 剥製にされる恥辱のどこが敬意なのだろう。
 そして軍人なのにそれを許容する。一体、江渡貝とどんな取引をしてるんだ?

 ダメだ……痛みと恐怖で何も考えられない。
 
 すすり泣きが聞こえた、と思ったら自分のものだった。
 声は出ないから、ひゅーひゅー変な音だったが、

 全身の激痛の中、涙がぼろぼろこぼれる。

 私は、いったい何のために小樽からここまで来たんだろう。
 
 月島さん!! 私ですよ!! 梢だよ!!

 必死に声を出そうとしたが、火傷の水ぶくれに爪を立てたような激痛が走っただけだった。
 私は無事な方の手を動かす。

 暗闇とは言え、完全に真っ暗では無い。
 至近距離なら私の顔を確認出来ないだろうか。

 ……そのとき、銃口の震えを感じた。
 そういえばいつ撃ってもおかしくないのに、まだ撃たない。

 ……無関係の民間人の少女を殺めるのにためらいがあるのか?

 月島軍曹は私の顔を認識出来ないのでは無い。
 犠牲者の顔を見ないようにしているのだ。
 
 そんなの、卑怯じゃないか。
 でも喉が焼けて声が出ない。伸ばした手は冷たく振り払われ、嗚咽が響いた。
 気づいて欲しい。お願いだから。
 だが月島軍曹は覚悟を決めたらしい。

「……恨んでくれ」

 許してくれという手前勝手なことは言わない。
 月島さんらしいなと、どこかで思った。
 そして引き金が――。

 カチッ。

「え?」

 あ。弾切れ。

 バーカっ!!

 うおおおおおおおっ!! 

 火事場の馬鹿力であった。
 私は全ての痛みを押して勢い良く上半身を起こし、無事な方の手をつきだした!!

「――痛っ!!」

 直撃した! 尾形さん直伝の目潰しっ!!……月島軍曹が背ぇ低くて良かった。


 だがしょせん小娘の悪あがき。反撃もそこまでだった。

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