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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第6章 月島軍曹2



 かくして紆余曲折、東奔西走、幾度もの死線をさ迷った末に、夕張についた私、梢であった!!

 ――が。

「月島さん、マジで見つからないし……」

 私は町の甘味処でうなだれる。

 ちなみに、今の私はまた元の小ぎれいな着物姿である。

 だって旅の服は目立つし、放浪で雑巾同然になってたので買い換えたのだ。
 ちゃんと布団のある宿にも泊まって風呂にも入り、やっと人間に戻れた気がした。

 ……ここまで費用は全てインカラマッさんのお小遣いから出ている。
 
 インカラマッさんは、私を『この時代の人間ではない』と見抜いたアイヌの美女占い師だ。
 彼女は、平素から占いで相当稼いでいるらしい。
 でもすごく良い人で、別れ際も私のことをひどく心配してお小遣いをくれたのである。

 ……後で確認したら、およそ『お小遣い』という額ではなかった。
 でもおかげで宿に泊まれたので、内心複雑である。

 それはさておき、月島さんが見つからない。
 もちろん夕張にも兵隊さんの駐屯地はある。が、どうやらそこにもいないらしい。

「だとすれば月島さん、もう小樽に戻ってる可能性が高いか」

 こんなに頑張ってたどり着いたのに。
 山盛りあんみつをかきこみながら、今後のことを考える。

 夕張の町で何かしら職につき、旅費を貯めて月島さんを探す?
 それとも、自力で元の世界に帰る方法を探す?
 あるいは土方さんのとこに戻って『またよろしくお願いします』と頭を下げる?
 ダメだ。考えがまとまらない。

 そもそも、私は『この世界に迷惑をかけたくないから』帰りたいだけであり、誰も私を待ってない令和の世界にはあんまり未練がないしなあ。

 どこにも居場所がないなあ、私。

 でも山盛りあんみつは完食。
 私は鬱々とした気分のまま甘味処を出た。

 そのとき。

「泥棒ーっ!!」

 つんざくような叫び声が聞こえた。私は他の通行人と一緒に声の方向を見ようとして――。

「うわっ!!」

 立っていた場所が悪かった。声の方角を見ようとしたら、向こうから突っ込んできた人と、もろに衝突した。
 私は尻もちをついてへたり込む。

 突っ込んできた人を見ると、凶悪な人相の見るからにゴロツキであった。
 彼は両手に何かを抱えている。カバンだ。

「泥棒! カバンを返せ!!」

 遠くで大声がした。

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