【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第5章 尾形さん2
私がカムイでないことを分からせようとしたけど、そもそも私自身が、あの庭についてちゃんと説明出来ない。
インカラマッさんは口では私をカムイ扱いしてるが、本当に信じてるかは不明だ。
彼女も女性の身で放浪しているだけあって、少々風変わりな人のようだった。
私は看病されついでに彼女に『庭』の話を聞いてもらった。
「なるほど。そのお庭自体がカムイの領域なのでしょうね。
それでシサム(和人)の梢さんにそのお力が宿ってカムイとしてここに下されたと」
インカラマッさんは真顔だった。だから私はカムイじゃないって。
「インカラマッさん。私が自力でカムイの庭に戻る方法はありますかね?」
……えらいファンタジーな会話をしている気もした。
だが、ずっと誰にも話せなかったことを話せて気が楽になった。
「そうですね。私たちアイヌの神謡には、カムイの国から遣わされ、人間の女性に姿を変えたホロケウ(オオカミ)カムイについてのものがあります」
「私のと設定が色々、いやかなり違ってる気もしますが、そのカムイはどうやってカムイの国にお帰りになったんですか?」
「アイヌの男性と結婚して子供を産み、孫が生まれた後、使命を終えたと見なされカムイの国に呼び戻されたそうです」
大往生じゃねえか!!
インカラマッさんは他にもアイヌのことを色々教えてくれたが、私が自力で帰る方法は分からなかった。
登場する神様たち、帰るときは『魂の姿』で帰ってるしなあ。
「でも女性の姿をしたカムイが出てくると、だいたい人間のお嫁さんになってますね。カムイの国に帰るとしたら寿命が来て安らかに帰ると」
インカラマッさんは、
「父神や兄神に呼び戻されることもありますね。そのカムイが結婚して子供が出来てからの場合が多いですが」
羽衣伝説と共通してるとこあるなあ。
その方が悲劇性が増すからか、それはそれで何かしらの教訓なのか。
インカラマッさんは、占いに使うという白キツネの頭骨を見せてくれた。これもまたカムイらしい。
「梢さんはきっと、梢さんにしか出来ないお役目のため、カムイの国から遣わされたのでしょう。
その使命が終われば、梢さんがカムイモシリとアイヌモシリ(人間世界)を行き来する旅も終わることでしょう」
えー。そうなの?