【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第5章 尾形さん2
話が一段落したところで、私は聞いてみた。
「皆さん一体、何をされてるんです? こんな風に大勢で徒党を組んで。
何で鶴見中尉様と敵対しているんですか?」
これは前々から疑問だった。
鶴見中尉の動向といい、皆して大きな目的があって動いてる感はあった。
ただ部外者の私には、それが何なのか皆目見当もつかなかった。
……牛山さんに聞く手もあったが、引き換えに何を要求されるか分からなかったので、今日まで謎のままだったのだ。
「知りたいかね?」
「そりゃもう」
お盆を持ち、土方さんにうんうんとうなずく。
「おい! こいつを巻き込む気か!?」
尾形さんが身を乗り出す。土方さんはニヤリと笑い、
「何だ? この娘のこととなると、ずいぶんとムキになるようだな、尾形百之助」
「そういうわけじゃねえよ。ただ、こいつは鶴見中尉が狙ってるし――」
「なら捕まらないよう、おまえが守っていればいいだろう」
「はあ!? 俺はあんたの用心棒に雇われたが、こいつとは何の――」
だが尾形さんの言葉は聞かず、土方さんは私に言った。
「お嬢さん。我々はアイヌの金塊を探している。鶴見中尉もだ」
……。
…………。
私は長いこと沈黙し、笑顔になった。
「そ、そういう活動的な余生の送り方ってスゴく素敵だと思います!
お歳を召されても常に大志を忘れない!
我々若者も、土方さんの志(こころざし)を見習わないといけませんね!」
「信じてねえな」「信じていませんな」
と、ずずっと茶を飲む牛山さんと永倉さん。
土方さんは謎めいた笑みを浮かべているのみだった。
そして尾形さんは私をジッと見、
「……梢。ちなみに俺も金塊目当てで旅をしていると言ったらどうする?」
「え?」
私は舌打ちし、尾形上等兵を冷たく見下ろす。
「ああ? いい歳こいて何寝ぼけたこと言ってんだ。とっとと定職を探せ。無職のごろつきが」
その後の奴の猛烈な蹴りは、座布団ガードでどうにか防ぐことが出来た……。
こうして私の周辺は一気ににぎやかになり、隠れ家での本格的な生活がスタートしたのであった。