【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第5章 尾形さん2
……牛山さんは凄まじい性欲の持ち主である。
女なら何でもOK通り越して、穴があれば男でもOKという恐ろしいタイプである。
絶対犯罪者だろう! というか犯罪者だそうな。しかも脱獄囚らしい。
何でそんな恐ろしい男を仲間に入れてんだ、土方さんっ!!
そんな男が一つ屋根の下にいるのだ。
口説かれるのは毎日を通り越し毎時間。夜半に忍ばれそうになったことも数知れない。
迫られれば抵抗らしい抵抗しない私が逃げ回っているのは、その勢いに逆にドン引きしているからである。
通いのトメさんのアドバイスで、最近は刃物を持って武装するようになったくらいだ。
なお牛山さんは何度私が拒否っても、引く様子はない。
「気の強い女は嫌いじゃねえ。その気になったら、いつでも俺の部屋に来な」
満足そうに頷き、床をギシギシさせながら家永さんの看病に戻っていった。
部屋って、家永さん寝てる部屋かな? 家永さんがいても襲うのかな? 絶対襲うな☆
……寝てる間にカマで始末した方がいいのではなかろうか。
物騒なことを考えていると、外で複数の男たちの足音が聞こえた。
「あ、帰ってきた!」
どうやら土方さんたちが本当に帰ってきたようだ。
私は慌てて玄関を出、家の門からヒョイッと出て笑顔で、
「土方さん、永倉さん、おかえりなさ――」
そのとき、私の目は驚愕に見開かれた。
お久しぶりに見る土方さんや永倉さん。
その後ろにいるのは彼らに従う若い衆。
さらにその後ろで今、馬から下りた男が――こちらを見た。
「……!? 梢!? お、おまえ、何でここに――!!」
外套に軍服、歩兵銃――顎の手術痕。
「尾形さん……夢じゃないんですね、本当に、尾形さん、なんですね……」
私は両手を口に当て、声を震わせる。
「何だ、知り合いだったのか?」
土方さんが尾形さんを見る。出先で新たに仲間に加えたメンツ、というのは尾形さんのことらしい。
「尾形さん……尾形さん……!!」
私は土方さんたちのお出迎えも忘れ、駆けだした。
そして一目散に駆けながら、帯に手をやり、ひっかけたカマを取り出し――跳躍した。
カマを振り上げ、鬼の形相で、
「死ねえええええっ!!」
近所に響き渡る大声を出し、襲いかかったのであった。