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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第5章 尾形さん2



 私が土方さんの隠れ家に預けられ、しばらくの時間が経った。

 小樽は今日も天気が良い。風の寒さも大分、和らいできた。
 私は竹箒(たけぼうき)で玄関前を掃いている。

「さて。電報通りなら、今日が土方さんたちの帰ってくる日ですか」

 私は気合いを入れ、割烹着のヒモを結び直す。
 土方さんたちが出先で用事を済ませ、今日、この隠れ家に戻ってくるらしい。
 行きより人数が増えているそうな。

 土方さんに永倉さん、この二人に信奉者のように付き従う人たち。
 それに加え、出先で獲得した新しい部下たちを引き連れてくるそうな。

 ……着々と舎弟を増やすヤ○ザか。
 あのじいさんたち、ホントに何してるんだよ。

「夕食の仕込みは済んだ、人数分の布団もある。風呂の準備もばっちり。洗濯物が大量に出そうだから洗濯石けんも補充した、繕い物の用意も万全――」

 指を折って数えてると、

「ふふ。すっかり、この家を取り仕切っているな」

 玄関先で牛山さんが笑っていた。
 私は笑顔で振り向き、

「牛山さん。家永さんの具合はいかがですか?」
「ようやく起き上がれるようになった。何か食わせたいんだが」

「分かりました。いきなり固形物は無理でしょうから、お粥(かゆ)を作ってきますね」

 私が竹箒を置いて、家に上がろうとすると、

「……梢。今夜からこの隠れ家は騒々しくなって、逢瀬(おうせ)もままならなくなる。だからその前に――」

 牛山さんにそうっと抱きしめられた。

「頬を染めて腰に手を回すの、止めていただけます?
 逢瀬もなにも、あなたのような方と寝る気は無いと何度も言ったでしょうが」

 持っているカマの柄で、ちょんちょんと牛山さんの腕をつつく。
 護身用に普段から帯にブッ刺しているのである。

「寝る価値があるかないか! 一度試してみろ! 後悔はさせん!!」
「はっ。ご冗談」

 牛山さんというのは、しばらく前にこの隠れ家に戻ってきた巨漢のオッサンである。
 彼はそのとき重傷の女装じいさんを連れてきてて、その方が家永さんと仰る。

 彼も土方さんのお仲間らしい。

『梢というのか。可愛い尻だ。抱かせろ!!』

 初対面でそう言われた衝撃は未だに忘れられない……。

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