第5章 生と死
目を覚ますとそこにパクの姿はなく、太陽の光が煌々とさしていた。
「もう昼だぞ。起きろ。」
フランクリンが起こしに来る。そして今、感じていることを素直に告げた。
「あの、お手洗いに行きたいです。」
フランクリンは紳士的だった。女の子と言うことを考慮してシズクに案内を頼んだのだ。
排泄を済ませ、先ほどのホールに戻ると、やはりパクの姿がない。何となくシズクの近くに座った。シズクは気にする素振りも見せず、本を読み出した。それを横目に覗いて読む。
しばらくすると、パク達が子供を二人連れて帰ってきた。そして、何故かその子供の一人、黒髪の子がノブナガと腕相撲を始める。
何度も、何度も手の甲をコンクリートに打ち付けられ黒髪の子は血を流していた。
可哀想。素直にそう思った。治してあげなきゃと。
そんなことを思っているうちに黒髪の子をフェイタンが取り押さえていた。
緊迫した空気が流れ、他の団員が止めにはいり、コイントスをはじめる。フェイタンのよみが外れ、拘束を解くと黒髪の子がフェイタンから距離をとると、もう一人の銀髪の子供と話しているが、気づかれないように黒髪の子に近づき、右手を握る。
「何だよ!」
睨まれる。しかし、そんなことは気にならなかった。昨日から自分よりも遥かに強い大人達に敵意を向けられているからだろう。今さらなんの感情もない。念に集中する。
「……」
両手に力を入れると彼の手の甲の傷は癒えた。それと同時に、自分の手の甲にもこの上ない痛みが走り、顔が微かに歪む。この姿をフェイタンとフィンクスが見ていることに私は気づかなかった。
「ありがとう。」
「いいえ。」
礼を言われ、軽く返事をするとその場から離れる。二人は解放された。
その後、シャルの指示でペア行動することに話がまとまった。
しかし、新人の私は治癒こそすごいが、戦闘力がほぼない。そのため現状、一番戦闘力が高いフェイタンとフィンクスのペアにまざる。
「死んでも面倒見ないからな。」
フィンクスに睨まれる。信頼が無い証拠だ。
「よろしく、お願いします。」
「……」
「行くぞ。」
ほぼ無視に近かった。フェイタンに関しては地下競売で私を殺そうとしていた。その事実が頭の中で渦を作っていた。警戒の視線をフェイタンとフィンクスに向ける。
(殺されないようにしないと)
心中でそう呟いた。
