第3章 再び地獄へ
ドサッ
体が痛い。動けない。
「ウゥ……」
「あ!目、冷ましたみたいだよ。」
重たいまぶたをあけると見覚えのある眼鏡をかけた女性がこちらを見ていた。
「こ、こは?」
「アジトです。」
「アジ、ト?」
虚ろな目を周りに向けると暗闇の中に数人の男女の姿が写る。
「君が、怪我を治せるのは本当か?」
誰かが私に声をかける。
「?わかりません。」
「パク。頼む。」
「わかったわ。」
パクと呼ばれた女性が私の肩に触れる。
「答えて、隠してることすべて。」
厳しい口調だった。
「……」
「へぇ~そう。なるほどね。」
何も語っていないにもかかわらず、彼女は納得の表情を見せる。恐らく、記憶や思いを読み取る能力だと感じた。
「何がわかった?」
「団長、この子すごいわ。念で受けた怪我なら全て治せる。しかも、普通の怪我もかなりの速度で治癒できるみたい。特質系だわ。他人にも、この治癒力を使うことができるようね。でも、治癒の際は彼女自身も、かなりの痛みを伴いうみたいだわ。しかも彼女の能力はウイルスや細菌、病、毒には効かないみたい。それはこの子自身も一緒。」
念の能力、全て読まれてしまった。ため息がでる。
この人に隠し事は出来ないと直感した。
「後は、そうね。私達と同じ、流星街出身みたいよ。」
そう言った彼女は先ほどの口調から、うって変わってとても穏やかなものだった。
「なるほどな。金持ちに拾われて、あのオークションに来ていた訳か。」
全てお見通しだ。
「いいだろう。お前、クモに入団するか?それとも、ここで死ぬか?」
緊張が走った。
「……クモ?皆さんは幻影旅団の方達なのですか?」
「あぁ。そうだ。」
その時だった。
「団長。今は抜け番無いぜ。」
周囲で黙りを決めていた。金髪の長身の男性が話にはいる。
「補欠でいいだろ。何か不満か?フィンクス。」
「それなら問題ねぇ。」
話に割り込んだ奴は喧嘩っぱやい性格かと思いきや意外と冷静だった。
「で、どうする?」
「……分かりました。入団します。」
私はその時ここで死ぬのも悪くないかもしれないと思った。しかし、身を呈して守ってくれたパパの思いは無下にできなかった。パパも念を使えたが、逃げずに私を守ってくれたのだ。
「そうだ。お前、名前は?」
「アリア……です。」