第11章 クモの刺青
「今日は私も街に連れてってください!」
歯を磨いている二人に深々く頭を下げる。フィンクスが驚いているのを横に、フェイタンは口をゆすぎ、口の中の泡をペッと出す。
「別にいいね。」
口元の水分を拭きながらフェイタンが答える。その間にフィンクスも口をゆすぎ、タオルで軽く口元を拭っていた。
「俺も別にいいぜ。ただしアリアは絶対フードかぶってろ。」
「え?どうしてですか??」
「フィンクスの言う通りよ。アリアの容姿、目立ちすぎね。」
(二人の方が目立つのではないか)
そう心のなかで呟いたことは、秘密だ。
「……分かりました。それで二人とご一緒できるのなら、簡単です。」
部屋から出るときにフードをかぶり、二人の後を追う。街に出ると思っていたよりも人が多く、視界が悪いこともあって、何度も人とぶつかってしまう。
「アリア。ワタシの服を掴んで、傍によるね。」
「ありがとうございます。」
フェイタンに従い。彼にくっついて歩くと、さっきまで人とぶつかっていたのが間抜けなほど、誰ともぶつからない。
「どうしてぶつからないんだろう。」
思っていたことがつい口に出てしまった。
「簡単ね。前、見るよ。」
隣にいたフェイタンには、私の呟きが聞こえていたらしい。
フェイタンの言う通り前を見ると、背の高いフィンクスが堂々と歩いていた。
「フィンクスが人、掻き分けてるね。だからフィンクスの後ろ歩きやすいよ。あと、フィンクスの目付きが悪いせいで、誰も近よて来ないね。」
「あぁ。なるほど。」
「お前ら、なに人の後ろで何イチャついてんだ。フェイ!テメェ。」
「うるさいよ。フィンクス。今アリアといいところね。」
「あぁ?ッチ!覚えとけよ。」
仲がいいほど喧嘩をすると言うが、まさにこの二人にはそれが当てはまるのかもしれない。
微笑ましい、という気持ちで二人を見守り、目的の場所へ歩みを進める。