第10章 痛み
暖かな温もりのなかで目が覚める。
目の前にはフェイタンがこちらを向いて寝ていた。
昨日の出来事が脳裏を駆け巡り、ひとりで赤面してしまう。
その直後だった。体の痛みを感じ、思わず声がでる。
「いッ!?」
痛みで上手く体に力が入らない。自分の念能力のせいで、痛みには慣れていると思っていたが、それとはまた、別の痛みだった。その痛みと格闘しているとフィンクスが目を覚ましたのか、背後でベッドから起き上がる音と、欠伸をする声が聞こえる。
「ふぁ~あ。お?目、覚めたか?」
フィンクスが、私も目覚めていることに気づいたのか、声をかける。何となく、何て話したらいいのか迷ったが、一先ず、体を起こさなければと思い、フィンクスに助けを求める。
「おはよう、ございます。あの、起き上がりたいんですけど……力が入らなくて、手を貸して貰ってもいいですか?」
フィンクスは嫌がる素振りも見せず、手をかしてくれる。
「ほらよ。お前、死んでもおかしくねぇ傷は直ぐ消えるってのに、疲労は回復できねぇ~んだな。」
「あはは。みたいですね。実は気づいたら念が使えてたので、自分でも何が例外なのか、よく分かってないんです。すいません。」
フィンクスに手をかり、ベッドに腰かける。重点的に腰が痛かった。両手で体を支えなければ、座っていることも辛い。
「?腰、いてぇのか?」
何時もより不自然な座りかたに気づいたのか、上半身裸で寝ていたフィンクスは服を着ながら聞いてくる。
「少し、だけです。」
「なら、今日は寝てろ、昨日いろいろあって疲れたろ。」
「そんな!お二人に迷惑かけられません。それに、はやく自分の身くらい守れるようにならないと、足手まといにはなりたくないです。」
「アリアがそんなこと、気にすることないね。」
背後で寝ていたフェイタンが話に入る。振り返ると、仰向けに寝ながらフェイタンはこちらを見ていた。
「いえ、気にします!」
「アリアが、一人や二人増えたところで、ワタシ達、別に関係ないね。でも、怪我人つれて歩くのは話が別よ。」
「フェイの言う通りだ。今の疲弊したアリアを連れて町を歩く方が、俺らにはお荷物だぜ。だから今日は大人しく寝てろ。分かったな。」
「はい。」
二人の説得におれ、その日は宿屋でほぼ寝て過ごした。