第9章 思い
私はそっと身を潜めていた。
恐らく10のカウントは終わっているだろう。
今頃、フェイタンとフィンクスは凝で探しているころだ。念の使い方は昔、優しいお姉ちゃんに散々鍛えられた。ちょっと言葉遣いは変だったけど、厳しかった。
誰かの気配がする。フィンクスだ。
(まずい!)
息を潜め、身を縮める。この鬼ごっこは見つからないのが最低条件。今の私の力では二人に取り押さえらたら即終わる。
「ッチ!この辺のはずなんだがなぁ。仕方ねぇ。あっち探すか?」
その言葉にホッと胸を撫で下ろす。
「なぁ~んてな。おい!そこにいるんだろ?」
息が一瞬止まる。バレてしまった。
(早くここから逃げなきゃ。)
スッ。
自分の横にフェイタンが降りてくる。身を縮めたまま、体が動かない。
「フィンクス。ワタシよ。なに勘違いしてるね。」
「ッチ!フェイかよ。あぁ~損したぜ。」
フィンクスは踵を翻し、背を向けて歩きだした。その姿が見えなくなり、気配も遠退いたとき、懇親の力を込めてフェイタンの傍から駆け出した。
「待つよ。」
先回りされる。
「何で、庇ったんですか?二人係で私を追いかければ、決着はついたはずです。」
「フィンクスと競争してるね。どちが先にアリアを捕まえるか。」
「だからですか。」
「大人しく、ワタシに捕まるよ。ニヤァ」
逃げなきゃ。
「無駄よ。アリア。ワタシより全然おそいね。」
踏み込んだ足を片手で捕まれる。
「はうっ!」
その場に倒れ込む。片足を持ち上げられ、逃げ出すことができなくなる。
「あとはフィンクスに触られたら終わりね。」
フェイタンはポケットをまさぐり携帯を出す。フィンクスに連絡をいれている。
数分もしないうちにフィンクスが現れた。
「ッチ!先越されたか。」
何時もより、不機嫌な顔で呆気なく私の肩に触れ、鬼ごっこが終了する。そして私の罰ゲームが決定した。
「約束よ。ワタシが先にヤるね。」
「あぁ~わかったよ。」
その時は、何のことだかさっぱりだったが、後々、私は罰ゲームの意味を知ることになる。