第2章 出会い
長い時間だった。周りの大人達は見るも無惨な姿になっていた。いつの間にか、座席から滑り落ちうつ伏せになっていた。視界には赤以外の色は写らなかった。そして動いてはいけないと思った。弾丸が止むとひとりの掃除機を抱えた眼鏡の女性が入ってくるのが見えた。そして会話が聞こえる。
「あっけねぇー。あっけねぇー。」
「ワタシの出番、全然なかたね。」
「頼むぜシズク。」
壇上にいた二人の会話だった。シズクと呼ばれた眼鏡の彼女は体にオーラをまとった。
「うん。行くよ。デメちゃん。この部屋じゅうの散乱した死体とその血。肉片、及び死人の所持品すべてをすいとれ。ついでに椅子も。」
そう言うと彼女は抱えていた掃除機をかけた。じっと視線だけを動かすと、眼鏡の女性は死体を掃除機に吸わせていた。恐怖が全身を駆け巡る。
「シズクの念能力は何度見ても愉快ね。」
「ウゥ……」
「あぁ?」
「まだ息のある奴いるね。」
死体のフリをしていた私の上に倒れていたパパが私にしか聞こえないほど小さな声で逃げろと呟いた。
背中が軽くなったのを感じた私は、いても立ってもいれず体を起こし、パパを見る。
「パパ……」
大ケガをしている。口からも頭からも血が出ている。治さなきゃ。とっさにそう思った。しかし、同時に逃げなきゃとも思った。体が言うことを聞かない。
パパは何かを小柄な男性に訴える。時間を稼いでくれていた。私に脇目も触れず、必死に這いずりながら。
「パパ……血が……」
そう呟いた瞬間だった。目の前に首が転がる。誰の?
見覚えがある。
「家族?なにそれ?次お前だよ。」
小柄な男性がこちらを睨む。私は後ずさりをする。直感した。殺される。声がでない。逃げなきゃ。
「誰か……た……すけ。」
小柄な男の右手にオーラが集まる。手刀が飛んでくる。首に何が貫通する痛みが走る。
「グハッ……」
倒れこむ。涙が頬を伝う。気が遠くなり、手放す。
「終わったな。」
大柄な男性が言う。シズクがアリアの死体を吸い込もうとデメちゃんを近づけるが吸いとれない。
「あれ?」
「どうした?」
「この子、吸えないんだけど、まさか、生きてる?」