第8章 now playing
二人から弄られ、逃げ出すことも出来ずに、ただ顔を赤めていた。
「い、虐め、ないでください。」
沸騰しそうな頭で必死に言葉を捻り出す。
何故か涙が流れた。その涙を見てフィンクスは諦めたように言う。
「はぁ。もういいだろフェイ。悪かったな。アリア。」
「チッ!良いとこだたのに。」
フィンクスは謝ると私の頭を乱暴に撫でる。肩に置かれていたフェイタンの腕も離れていた。
ほっと心を撫で下ろすと、フィンクスはタオルを2枚私の頭にかけた。
「今日は野宿すっからな、日の出てるうちに水浴びてこい。夜に河で溺れるといろいろ厄介だ。」
「さっきの男のお金で、宿に泊まらないんですか?」
先程の男のバインダーにはお金がいくらか入っていたはずだった。
「いや、今日は止めとく、街の様子も分からねぇしな。あとアリアのことも団長から頼まれてるから、明日、このままここで少し鍛えるぜ。」
「鍛えるんですか??」
「取り敢えずだ。戦闘になったら、お前の治癒やスピードだけじゃ。役に立たねぇ。少なくとも体術くらいは身につけて貰うぜ。」
フィンクスの話を聞き素直に頷く。
「えっと、よろしくお願いします。」
「まぁ、まず、水浴びしてこい。俺らは街に食料取りに行ってくるからよ。1時間でもどる。」
フィンクスは話が終わるとフェイタン二人、街へ向かった。
自分はいつも、団員の誰かと一緒だったが、久しぶりの間の一人だった。ホテルに自分の荷物を取りに戻ったぶりだ。しかし、取り敢えず服を脱ぐ。
水の中へ一糸纏わぬ姿となり沈む。思ってたより深く穏やかな川だった。しばらく泳ぎ、タオルを1枚、水の中に入れ、水中で体を拭く。拭き終わり少し冷たかった水から出た。
水で濡れた長い髪が体にまとわりつく。乾いたタオルで全身の水分を拭き取り、髪の水分を絞ると服を着る。濡れたタオルを軽く洗い、水を絞って木に吊るした。
二人を待っている間、これまでのことが走馬灯のように、思い出される。普通の子は、義理でも優しくしてくれた両親が、目の前で殺されれば、もっと悲しみ、泣き叫ぶのだろう。しかし、自分は幼き5年間を流星街で育った。だからだろう、死に対してこれ程、無関心なのは、そんな自分が、とても悲しく涙が溢れた。