第1章 0:00
レンが、丁度8回目の欠伸をしたとき、屋上の唯一の扉が開き、金髪の青年がため息をつきながら現れた。
「二人ともごめんよ。30分も待ち合わせに遅れた。」
「シャル。お~そ~い~。」
「シャル遅かたね。」
シャルはてへぺろとでも言いたげな表情で二人に謝る。
「いや、本当!ごめん!何でもおごるからさ!」
「わーい。じゃ~新しい本買って!」
子供のように無邪気にはしゃぐレンは先ほどまでの眠気を忘れていた。
「あはは、わかったよ。本ね。明日買ってくるよ。」
「シャル、レン、アジト戻るね。はやくするよ。」
「はーい。」
三人の影はビルからビルへ移り、夜の闇に紛れ、旅団のアジトへと向かっていく。
「ねぇ。フェイタン。何でさっき私の欠伸の数を数えてたの?」
レンは、アジトへと走っている最中に先ほど有耶無耶にされた話をフェイタンにもう一度きく。
「後で使うからね。」
フェイタンは再びあやふやな答えをレンに返す。
「なにに使うの?」
「それは秘密ね。教えたら楽しみなくなるよ。」
「あはは、フェイタンあんまりレンをいじめると逃げられるよ?」
レンとフェイタンの会話を聞いていたシャルナークがフェイタンの悪戯な笑みを見て会話に入ってくる。
「シャルは黙るよ。それにレンは、ワタシから逃げられないね。」
「どうして?」
シャルが聞き返す。
「逃げないように、拘束すればいいね。」
「だってさ~」
シャルナークはレンに話を振る。
「絶対にやだ!それじゃ~フェイタンに好きなときに抱きつけないじゃん!」
「へ~。良かったね。フェイタン。可愛い彼女がいてさ。」
シャルナークは再びフェイタンに話を戻す。
「鬱陶しいのは勘弁ね。」
「またそんなこと言ってさ~。本当は満更でもないんだろ?」
「まぁ、レンは、例外ね。」
シャルナークは、このときフェイタンが黒いマスクの下で微かに呟いた、言葉を聞き取る事はできなかった。