第1章 0:00
ビル風が頬をなでる屋上で黒い服に身を包んだ目つきの鋭い少年と小柄で長い銀髪と妖精のような顔立ちが印象的な少女が転落防止柵の外で煌びやかな街を見下ろしていた。
「ふぁ……ねむい……」
少女はビルのふちに両足をたらし、小さな手は目をこすり、あくびを繰り返していた。
「ガキは寝る時間ね。レン。」
少女の後ろで転落防止柵に寄りかかり携帯を見つめている。少年が独特な口調で話す。
「ガキじゃないよ。フェイタン。それに、眠いのは昨日、遅くまで起きてたせいだもん。」
少年の方へ視線を向け、ほっぺをぷくりとふくらます。
言い終わるとレンは、ふいッと再び視線を街に移した。
「あと、少しね。シャルがきたらアジト戻るよ。」
「はーい。」
仕事を終えた二人はシャルと合流すべく、待ち合わせのビルでシャルの到着を待っていた。二人の方は順調に終えられたが、シャルの方は、予定外の事態になったようで、到着が遅れていた。
沈黙が続く。お互いにおしゃべりが得意なタイプではない。話のネタがない限り、会話はあまり続かないのが当たり前だった。
「ふぁ~。」
「今ので5回目ね。」
「むぅ~。なんで数えてるの。」
「秘密ね。ニヤァ」
再び、レンは、フェイタンの方に頬を膨らませ振り向く。そこには、名案が浮かんだ時の笑みを作り、レンを見下ろして立っているフェイタンがいた。
「嫌な予感しかしない。」
レンは、頬のふくらみを解き、眉をひそめる。
「アジト帰たら覚悟するね。」