第5章 4:00
外が少しずつ明るくなり、日の出が近いのがわかる。大切な自分の手帳を懐に待ち合わせの場所へ急ぐ。
レンは情報屋である。今回はかなりの大がかりな仕事だった。何せ、幻影旅団のメンバーの一人を尾行するのが今回の依頼内容だった。
金髪の長身の男性と背の低い黒髪の男性を3日間、尾行し続けた。そして、その間の全てを依頼主へ渡す。今回の依頼主の名前はクロロ。彼との待ち合わせの場所へ急ぐ。
「やぁ。どうだった?」
額に包帯を巻いている彼は私の姿を見るなり、声をかける。
「えっと、これです。」
懐から手帳を取り出し、クロロに渡す。
「なるほど、良くできている。これは報酬だ。」
「どうも。」
クロロから報酬を受け取り、その場から離れようとする。すると彼はレンを呼び止める。
「待ってくれ。もうひとつ頼まれてくれないか?上手く行けば、報酬は今の倍は出す。」
「な、内容は?」
「この黒髪の背の低い方を引き続き尾行してほしい。期間は3日。どうだ?」
「わかりました。では、3日後にまたここで。」
依頼内容を聞くとその場から消える。
クロロからの依頼を引き受け、黒髪の背の低い男性のみを尾行し続けた。
彼は拷問が趣味なのか、その手の道具を取り扱う店をよく出入りしていた。
手帳に事細かく彼の行動を記述していく。
3日目
ターゲットはひとりで外出していた。
相変わらず、夜に出歩くのが日課のようだ。そのせいかレンはかなり寝不足だった。
だからだろう。背後からの気配に全く気がつかなかったのだ。
「っん!?」
眠り薬をかがされ、意識が遠退いていた。
目隠しをされている。椅子に座らされ、手は後で拘束されている。口にも猿轡が噛まされている。
「……」
「気がついたか?」
聞き覚えのある声だった。ターゲットの黒髪で背の低い男の声だ。焦りが表情に出てしまう。
「お前、何故、ワタシのこと尾行してるか?」
「!?」
バレていた。猿轡が外された。答えろと言うことだろう。
「依頼された。」
「誰にか?」
「い、言えない。」
暗黙のルールがある。依頼主は売らない。もし売れば、それは情報屋として信頼が失墜することになる。
「……」
微かに布の擦れる音がする。背後からだ。そして、爪を一枚剥がされる。
「……ヴッ!?」
痛みに声が漏れる。