第10章 練習試合後
海常の校門に走ると誠凛の皆さんが待っていた。
『すみません、遅くなりました!』
「全然いいわよー、なら帰ろっか!」
こうして、誠凛高校バスケ部は海常高校を後にした。
その後テツ君の容態を見るため、病院へと向かった。監督が引率してくれたので私達は病院の外で待機していた。
すると、火神君から声をかけられる。
「おい、一花。」
『?どうしたの、火神君?』
火神君にしては珍しく随分と話しづらそうにしていた。
「…さっき黄瀬と何話してたんだよ。」
『んー…。』
どんな内容かと言われれば表現するのがすごく難しい。
だから、教えないことにした。
『秘密!』
「はぁ!?」
『火神君には教えない♪』
「なんでだよ、教えろよ!」
火神君の周りを逃げ回れば、ご丁寧に追いかけてきてくれる火神君。
「ちょっと待てって…!」
ついには腕を捕まれ、火神君に腕ごと引き寄せられる。
『うわっ…。』
その拍子に火神君の胸板に顔をぶつけてしまい思わず声が漏れた。
意外に心配性な火神君はすぐに謝って腕を離してくれた。
「わ、悪りぃ。別に無理矢理するつもりは…。」
語尾がどんどん小さくなっていく火神君がなんだか可愛くて笑ってしまう。
『っあははは!』
「な、なに笑ってんだよ!」
『心配し過ぎだよ、火神君。どこも怪我してないし、無理矢理じゃないって事も分かってる。だからそんなに慌てないで?』
「うっ…。」
そうこうしてるうちにリコ先輩のテツ君が病院から出てきた。どうやら何もなかったみたい。
「黒子も異常なしってゆーし…、何はともあれ、」
小金井先輩がニマニマしてる。
「っしゃー!!勝ったーー!!」
小金井先輩を引き金に部員の皆さんが、歩道の真ん中で喜びを露わにしていた。
私もとっても嬉しかった。
黄瀬君の変化も見られたし。
「帰りどっかで食べてこうぜ!!」
「何する?」
祝勝会として皆んなが提案し始める。
「安いもんで。オレ金ねー。」
「オレも。」
「ボクも。」
先輩がお金がない宣言をすると、火神君やテツ君もそれに続いた。
そこで日向先輩がアレっ?と気付く。
「…ちょいマテ。今、全員の所持金交通費抜いていくら?」
………………。
21円。