第9章 練習試合
黒子のあまりにも強い意志にリコが溜息をついた。
「わかったわ…!」
『リコ先輩!!』
「ただし!ちょっとでも危ないと思ったらスグ交代します!」
カントクであるリコの指示にようやく一花も納得した。
『とにかく無茶だけはしないで。』
「分かりました。」
『…頑張ってね!』
「はい、行ってきます。」
第4Q、残り5分。
黒子の登場によって戦況がガラリと変わっていた。
黒子の見えないパスが敵を翻弄する。
第2、・3Q丸々20分控えていたため、元のウスさに戻っていたのだ。
「うおお、マジか!?差が詰まってる…!」
誠凛の必死の追い上げに会場全体が盛り上がっていく。
そして日向にボールが渡りシュートを決めたところでついに…、
【誠凛 82-82 】
「……同点…!?」
「同点だぁー!?誠凛、ついに追いついてきた!!」
会場の熱が上がり盛り上がっている中、同点という事実に呆然とする者が一人。
(ーーー同点!?)
黄瀬がニヤリと笑い黒子と火神を見据えた。ベンチで見ていた一花は黄瀬の変化にいち早く気付く。
『…マズイですね。』
「えっ?」
それはコート内にいた黒子と火神も気付いていた。
(コイツ…、フンイキが変わった…!?)
次の瞬間、ボールを持った黄瀬は予想外の速さで黒子を抜き去っていく。火神は作戦通りヘルプについた。
その隙を狙って黒子は黄瀬のボールに狙いを定める。
…が、その瞬間、黄瀬はボールを反対の手に持ち替えた。
『「「………!」」』
「なっ……!」
そのプレイはベンチ側にも衝撃を与えた。
『(テツ君の気配を本能的に察知した…。)』
黄瀬は驚きで固まっている火神をあっさりと抜きダンクを決めた。