第9章 練習試合
第3Q、残り3分。
【誠凛 68-74 海常】
黒子がいないながらも何とか食らいつく誠凛。
だが、体力も削られ、どうしても逆転に持ち込めない。
圧倒的に不利な状況に一花とリコの顔も険しいものになっていた。
『………。』
「カントク…、何か手は無いんですか?」
ベンチのメンバーがリコに問いかける。
だが、前半のハイペースで誠凛には策なんて仕掛けるような体力は残っていなかった。
「せめて黒子君がいてくれたら…。」
リコの縋るような独り言に黒子がピクリと反応する。
「…わかりました。」
「え?」
黒子の声が聞こえたかと思うと、そこにはムクリと起き上がる黒子の姿が。
「おはようございます。…じゃ、行ってきます。」
黒子は何事も無かったかのようにコートに戻ろうとするのを一花とリコが引き止める。
『何言ってるの、テツ君!今出て何か起こってからでは遅いの!!』
「一花さん…。」
『お願いだから、無茶しないで…。』
一花は持病によってバスケットを制限される苦しさを身をもって知っている。
だからこそ黒子には自ら選手生命を棒に振るようなことはして欲しくなかった。
「そうよ!てかフラついてるじゃない!!」
「大丈夫です。それに今行けってカントクが…。」
「言ってない!たらればが漏れただけ!」
「…じゃ出ます。」
「オイ!」
二人が説得しても黒子は中々折れない。
「ボクが出て戦況を変えられるならお願いします。
…それに約束しました。火神君の影になると。」
『…テツ君。』
「一花さん、そんな顔しないで下さい。ボク達は必ず勝ちます。そのためにボクは行くんです。」
『でも…!』
「黄瀬君を倒すんでしょう?」
『…!!』
「ボクに任せて下さい。」