第9章 練習試合
テツ君と黄瀬君が対峙する。
思わぬ相手の登場に海常チームからは驚きの声が上がっていた。
無理もないと思う。
テツ君は言わばコート上で最弱の選手。
…それでもウチの6人目を舐めてもらっちゃ困るな。
「…まさか夢にも思わなかったっスわ。黒子っちとこんな風に向き合うなんて。」
「…ボクもです。」
誠凛も海常も視線はあの二人に集まっていた。
「一体…どーゆーつもりか知んないスけど…、」
黄瀬君がドリブルの姿勢に入る。
「黒子っちにオレを止めるのはムリっスよ!!」
…よし、掛かった。
テツ君を抜いた黄瀬君にすぐさま火神君がヘルプにつく。火神君がついた事により黄瀬君の動きが一瞬止まる。
『残念だったね、黄瀬君。本当の狙いは…、』
「"止める"じゃなくて、」
「"獲る"のよ!」
パシッ!
「なっ!!?」
テツ君が一瞬の隙を突いて、黄瀬君の後ろからバックチップでボールを弾いた。
作戦成功だ。
黄瀬君も驚いたように目を見開いている。
「オマエがどんなすげぇ技返してこようが関係ねぇ。抜かせるのが目的なんだからな。」
そして火神君がレイアップを決め、誠凛に得点が入る。
そう、テツ君がマークについたのはわざと。
わざと抜かせ、火神君のヘルプと連係してボールを奪う作戦だった。
「…やっかいだな、クソ…。ダブルチームの方がまだマシだぞ。」
海常の選手にも少し焦りの色が見えてきた。
テツ君のカゲの薄さで後ろから来られたら、いくら黄瀬君でも反応できない。
でも、黄瀬君はまだ諦めていなかった。