第9章 練習試合
黄瀬が振り向いて見れば、盛大に笑っている火神の姿が。
そしてその様子を見て満足気に微笑む一花の姿が。
「………?何で笑ってんスか…?」
黄瀬だけでなく誠凛や海常の選手、リコまでもが驚いていた。
「一花ちゃんも何笑ってるの?」
『あっ、いや。火神君、吹っ切れたようなので…。』
「そ、そう…。」
だが、黒子だけは一花のように少し微笑んでいた。
「ワリーワリー。ちょっと嬉しくてさァ…。そーゆーこと言ってくれるヤツ久しぶりだったから。」
笑いすぎて涙を浮かべている火神に黄瀬が驚く。
「アメリカじゃそれがフツーだったんだけどな。」
「え!?アメリカいたの!?」
黄瀬は少々的外れな部分に食いつく。
「日本帰ってバスケから離れたのは早トチリだったわ。ハリ出るぜ、マジで。
やっぱ人生挑戦してナンボじゃん。」
ニヤリと笑う火神。
「勝てねェぐらいがちょうどいい。」
その言葉に少し懐かしそうな響きを一花は覚える。
「…おかげでわかったぜ、オマエの弱点。」
「!?」
キョロキョロと辺りを見渡し、誰かを探す。
「自分から言いだしづらかったのもちょっとわかるわ。」
やっと目的の人物が見つかったのか、ズンズンとそこへ向かう。
「見ればできる?見えなかったら?」
ガシッと目的の人物の襟元を掴み、引きずっていった。
「そもそも元からウスいのが前提じゃやれって方がムリな話だろ。いくら身体能力が優れてるオマエでもカゲを極限までウスめるバスケスタイルだけはできない。」
黄瀬に冷や汗が流れる。
「…つまり
黒子だろ!オマエの弱点!」
ガシガシと火神は黒子の頭を撫でた。
火神が自力で導き出した答えに一花は小さな声で反応する。
『火神君、大正解だよ。』