第9章 練習試合
「あ、ここっス。」
「…って、え?」
『…どういうこと?』
私たちが驚くのも無理はなかった。
なぜなら準備されていたコートが片面しかなかったからだ。
「……片面でやるの?」
『もう片面は練習中ですね…。』
「てかコッチ側のゴールは年季入ってんな…。」
驚いている私達に気付いた海常の武内監督は私達の様子など気にも留めずあっさりとこう言い放った。
「ああ、来たか。今日はこっちだけでやってもらえるかな。」
「………。」
さも当たり前のように言われ、思わず押し黙るリコ先輩。
「こちらこそよろしくお願いします。…で、あの…これは…?」
片面でやる理由を恐る恐るリコ先輩が尋ねれば、武内監督はありのままを話してくれた。
「見たままだよ。今日の試合、ウチは軽い調整のつもりだからね。だが調整と言ってもウチのレギュラーのだ。」
あからさまに見下した態度で接してくる武内監督に、私も気分が悪くなってきた。
「トリプルスコアなどにならないように頼むよ。」
ブチッ。
『………。』
「お、おい。三浦…?」
自分の中の堪忍袋の尾が切れる音が聞こえた。
先輩に名前を呼ばれた気がしたが今はそれどころじゃない。
火神君を見ればあからさまにムカついてる顔で今にもキレ出しそうだった。
「一花っち、ちょっと落ち着いて、ね?」
黄瀬君がユニフォームに着替えながら、私を宥めようとするが追い討ちをかけるように武田監督が続ける。
「…ん?何ユニフォーム着とるんだ?黄瀬、オマエは出さんぞ!オマエが出たら試合にならなくなってしまうからな。」
「ちょっとカントク、やめて。そーゆー言い方マジやめて。これ以上一花っちを刺激しないで…!」
イラッ
あまりの対応に腹が立って仕方ない。
許されるなら私が試合に出たいくらいだ。
でもここは我慢して皆さんに託すしかない。
私は一生懸命サポートに徹しよう。
そう心に決めて自分を落ち着かせようとした時、次は黄瀬君が挑発してきた。
「大丈夫!ベンチにはオレ入ってるから!…でも、オレを引きずり出すこともできないようじゃ…オレら倒すとか言う資格もないしね。」
………。