第8章 訪問者
幸い部活も終了間際だったので今回はそのまま解散ということになった。
すぐに着替えを済ませ、黄瀬君の元へ急ぐ。
『お待たせ。』
「いや、意外と早かったっスね。」
『あのまま部活終わったの。』
「え、俺なんか悪いことしちゃったっスね…。」
『今更だよ。』
「一花っちって、意外と毒舌っスよね…。」
『そうかな?なんかごめんね?』
「いや、全然いいっス。ストバスのコートでも寄って話そ。」
『うん。』
黄瀬君とゆっくりと歩き出す。
さりげなく私の歩調に合わせてくれているところに彼の優しさを感じる。
「一花っち、誠凛に行ったんスね。」
『うん。』
「まぁ、理由は後で聞くっス。それより聞いてよ!俺、高校生になってから余計にモテてる気がするっス!ねぇ、どう思う!?」
『ん〜…、どうでもいいかな。』
「ヒドッ!!」
わざと泣くフリをしてふざける彼。
『アハハッ。嘘だってごめんね?』
「嘘でもヒドイっス〜。」
『だからごめんって。黄瀬君は優しいからさ、どんなことがあってもみんなに笑顔で接しててすごいと思うよ。尊敬してる。そんなところがみんな大好きなんだよ、きっと。』
「…一花っち〜!好き!」
ガバッ
『く、苦しい。どいて、黄瀬君。』
「一花っちは俺のことわかってくれてるっスね。……やっぱり一花っち、欲しいっスわ。」
『へっ?』
首に顔を埋められて呟かれる。
けど、声が小さ過ぎてよく聞こえなかった。
「いや、何でもないっス。ほら着いた。ちょっと相手してくんねースか?」
『…3本勝負なら。』
「よしっ。本気でいくっスよ?」
『ちょっとは手加減してください。』
こうして久し振りに黄瀬君とバスケをした。