第8章 訪問者
『私も誠凛に残りたい。』
私はあの時からここのバスケットボール部でずっとバスケがしたいと思っていた。
その想いを簡単に曲げることはできない。
「どうして!そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん!なんでもっと強いトコ行かないの?」
必死に説得する黄瀬君には申し訳ないけど、私にはその考えを肯定することはできない。
それはテツ君も同じで、だからこそこの誠凛に来た。
『あの時から考えが変わったの。』
「考え…?」
『そう、そして何より火神君と約束した。』
そこからはテツ君が宣戦布告する。
「キミ達を…、"キセキの世代"を倒すと。」
その発言を聞いた黄瀬君は顔を引きつらせ、少し不機嫌になる。
「…やっぱらしくねースよ。そんな冗談言うなんて。」
『冗談なんかじゃな…、』
「ハハッ。」
黄瀬君の言葉に反論しようとすると、火神君が突然笑い出した。
火神君…。
正直、黄瀬君に弾き飛ばされたとき、少し落ち込んでいたのかと思ってた。
けど、あなたはそんなことさえ楽しんでしまうほどバスケが大好きだった、ってこと忘れてた。
やっぱり…、あの二人なら戦える。
火神君がテツ君の肩に手を乗せて、黄瀬君と向かい合う。
「ったく、なんだよ…。オレのセリフとんな黒子。」
「冗談苦手なのは変わってません。本気です。」
すると、黄瀬君はようやく諦めた様子で私に近づく。
『…何?』
「いや、さっき言ったじゃないスか。あとで事情聴取するって。」
『…そういえば。』
「そういえばって、ヒドイっス!…とにかく、勧誘の件はとりあえず諦めるっス。じゃ、誠凛の皆さん、お邪魔してすいませんでした。」
そこは意外と真面目なんだ。
「一花っち、なんか失礼なこと考えてないっスか?」
『な、何も!!』
「ほんとっスかね〜?…まぁ、いいや。とりあえず正門で待ってるっス。」
『分かった。すぐに準備するね。』
そこまで言うと、黄瀬君は体育館から去っていった。