第7章 日本一に
「なぁ、一花。」
俺の胸辺りにある小さな顔がこちらを向く。
『どうしたの?』
「1on1していかねーか?」
『それは…。』
「ダメか…?」
あまり乗り気ではない一花に駄目押しする。
『まぁ、いっか。』
「本当か!?」
『うん、その代わり3本勝負でもいい?』
「全然構わねぇよ!!」
帰り道を変更してストバスのコートに寄る。
早速ボールを取り出し、一花に渡す。
「ほらよ。」
『…いいの?』
「レディーファーストってやつだ。」
『ハハッ、ありがとう。じゃあ早速いくよ?』
まただ。
一花は俺の前から消えたようにドライブし、あっという間にシュートを決めた。
『よしっ、まず1点目。』
「さすがだな。」
『それほどでもないよ。』
こいつの速さの理由が分かった。
こいつには予備動作が無い。だから次にどんな動きでくるか全く想像出来ないんだ。
理屈は分かった。ただ理屈だけで止められるものじゃない。それに、このスタイルを使いこなすには相当な練習量が必要だ。…そんだけバスケが好きなんだろな。
「次は俺の番だ。」
『よし、かかってこい!!』
「おっしゃぁ!!」
こいつとバスケしてるとマジで楽しい。
自分より強い相手に挑んでいく感覚、そしてそれを楽しむ感覚。それこそが自分自身を強くする。
楽しくって仕方ねぇや!!
「はぁー、完敗だ。」
『けど、前した時より強くなってたよ。』
「マジで!?」
『うん、あのドライブに反応できる人はなかなかいないしね。本当に楽しかった、ありがとう!』
そう言ってとびきりの笑顔を見せる一花。
やっぱこいつは笑ってる時が一番可愛いな。
…って何考えてんだ俺!?
でも、本当にそう思う。特にバスケについて何かしてる時はメチャメチャ輝いてる。
「お前、ほんと楽しそうにバスケするよな。」
『そうかな?火神君程じゃないよ。』
「そうか?」
『そうだよ笑。』
なのに、なんだこの違和感は。
こいつ、まだ何か隠してる事があるんじゃねぇか…?