第7章 日本一に
「ちょっと大声出したぐらいであんな怒るかよ?」
『そうだね笑 でも私もびっくりしたよ?いきなり大声出すんだもん。』
一花は火神と今朝の事について話していた。
「だってカントクが…、」
「未遂だったのにボクも怒られました…。」
火神の言葉を遮って黒子が話す。
ブフッ
『ちょ、ちょっと大丈夫!?火神君!?』
「おう…。(店変えよーかなー。カブリすぎだろ…。)」
いきなり飲み物を吹き出した火神の背中をポンポンと叩き彼の様子を伺う。
それはひどく落ち込んでいるようだった。
「サンキュー、一花。」
『うん、全然いいよ。』
なんとなくいい雰囲気の二人。
その空気を現実に引き戻すかのように黒子が言う。
「…あと困ったことになりました。」
『何が?』
「いきなり約束を果たせそうにないです。」
「は?」
どうやら黒子は屋上での宣言ができなかったため、入部できるか懸念しているようだった。その発言を火神が否定する。
「…それより一つ気になってたんだけど、」
そのまま火神が続ける。
「そもそもオマエらも幻の6人目とかバスケの神様なんて言われるぐらいだろ?なんで他の5人みてーに名の知れた強豪校に行かねーんだ?」
火神は感が優れているのか、中々鋭いところを突いてくる。
「オマエらがバスケやるのには…、なんか理由あんじゃねーの?」
『「………。」』
その言葉に一花達は一旦言葉を失う。
「…ボクがいた中学校はバスケ強かったんですけど、」
「知ってるよ。」
「そこには唯一無二の基本理念がありました。それは…」
"勝つことが全て"
『そのために必要だったのはチームワークなんかじゃなくて、ただ"キセキの世代"が個人技を使うだけのバスケット。それが最強だったの。けど…、』
もはやそこに「チーム」はなかった。
「5人は肯定してたけどボクには…何か大切なものが欠落してる気がしたんです。」
『私も。あの5人は強すぎた。だから、そこにチームでプレイする事の楽しさ、バスケの楽しさはなかった。』
黒子と一花は少し苦しそうに告げる。