第7章 日本一に
月曜日の朝。
なんだかまだ寝足りなくて、思わず欠伸が漏れる。
そういえば火神君達いないな…。
まさか遅刻?
いや、火神君は別としてテツ君はそういうタイプじゃないし…。火神君に関しては勝手なイメージだけど。
朝礼まであと5分。
二人とも調子でも悪いのかな…。
火神君はあんまり風邪とか引かなさそうだけど。
トクッ
胸の鼓動が速くなるのを感じる。
最近いつもこうだ。火神君のことを考えると心臓が喜びを知らせるように活発に動く。
まだ捨てきれないのか…。
病気を知らされてから、全てのことに思い入れ過ぎず好きな人なんて絶対に作らないと思ってたのに。
私、本当に火神君に恋してしてるのかな。
認めたくなかった。そんな気持ちがまだ自分の中に残っていたなんて。
大切な人と別れるのはとても辛い。
ならいっそ大切な人はこれ以上増やさない。
そう決めたはずだったのに…。
火神君はそんなことは知らないとばかりに、私の心に飛び込んできた。
もし私が普通の女の子なら大好きなバスケを目一杯楽しんで、大好きな友達と遊び尽くして、大好きな人と結ばれたい。
そう願ったところで私の病気が良くなることはない。
分かってるからこそ秘かに芽生えたこの気持ちを取り除くように制服の胸の部分をキュッと握りしめる。
それは痛くて痛くて思わず涙が溢れそうになったから、空を見上げた。
その時だった。
屋上の方に人影が見え、よく目を凝らす。
すると一人の男子生徒が柵に飛び乗り、こう叫んだ。
「1-B 5番 火神大我!! "キセキの世代"を倒して日本一になる!」
『火神君…?』
その声は私の不安を一気に取り除いてくれるような、眩しい声だった。
私、この人について行きたい…!
心からそう思わせてくれるような声だった。
火神君の声に驚いた生徒から漏れる声に紛れて私も小さく呟く。
『私も誠凛バスケットボール部を日本一にすると約束します。』