第6章 幻の6人目
部活が終わり帰る準備をしていた時、火神君に声をかけられる。
「なぁ、一花。」
『ん?火神君、どうしたの?』
話の内容は今日の帰りマジバに寄らないかということだった。
『いいね、一緒に行こ!』
「お、おう。じゃあ体育館の外で待ってる。」
『わかった!すぐ行くね!』
「ゆっくりでいいぞ。」
『ありがとう!』
火神君と別れて、走って部室に戻る。
その様子をテツ君が心配そうに見ていたとも知らずに。
部室に戻るとまず息を整える。今日はすんなり血液の流れが穏やかな速度に落ち着いてくれた。
今日は調子が良いみたい。
それに、火神君にマジバに誘われた時、普通の高校生みたいで内心すごく嬉しかった。
中学の時もみんなでアイス買ったりしてたな…。
けど、いつのまにかみんながバラバラになってそんな機会も無くなっていった。
妙に大人びた彼らはどこか楽しむといった感情が欠けていた。
テツ君と火神君達なら、きっと変えられる。
彼らを、彼らのバスケを。
……っダメだ。せっかく今から楽しむのにこんなことばっかり考えてちゃ。
急いで着替えを済ませ、体育館の外へと走る。
火神君が待っている寸前で止まり息を整えてから、彼に声をかける。
『お待たせ、火神君!』
「おう、待ちくたびれたぜ。」
『嘘っ、そんなに!?』
驚く私を見た火神君はプッと吹き出し、クシャクシャっと私の頭を撫でた。
「嘘だよ、そんな待ってねぇ。安心しろ。」
『ちょっと意地悪しないでよ!』
「すまねぇって、そんな怒んなよ。」
『怒ってないもん。』
「そうかよ、なら行くぞ。」
そう言って、私の腕を掴み歩き出す。
ちょっと丸め込まれた感は否めないけどそんなくだらないやりとりも新鮮でなんだか楽しかった。
「お前、何ニヤニヤしてんだよ。」
『なっ、してないってば!』
「そうか〜?」
『そんなこと言って、火神君もさっきニヤニヤしてたじゃん。』
「はぁっ!?そんなのいつ見たんだよ!」
『さっき、私のこと待ってる時。』
「バカッ、お前もっと早く言えよ!」
『えっ、まさかの自覚なし?』
「う、うるせーよ。」
少し照れた様子の火神君。
見た目はちょっと強面だけど、中身はとっても優しい人みたい。
この人のバスケをもっと見たい。
私の命が続く限り。