第6章 幻の6人目
「じゃあやっぱり一花ちゃんは"バスケの神様なの…?」
『…そう呼ばれているだけですけどね。』
「そう…。」
まただ。一花はこの名前で呼ぶと少し顔が曇る。
この美しい少女は一体何を抱えているのだろうか…。
リコはそれが気がかりでならなかった。
「あッ!!」
黒子のパスによってようやく火神にパスがまわった。
(しまっ…、黒子のパスに気をとられすぎた…!!)
二年生は咄嗟に反応するが、火神はそのままシュートを決め得点の差は更に縮んだ。
《一年 36-37 二年》
「うわあ!!信じらんねェ!!」
「一点差!?」
その差に余裕を持っていた二年も焦り始める。
「ったく。どっちか片方でもシンドイのに…!(二人組んだ時の獰猛さは手がつけらんねーな!)」
『みんな頑張って!!』
そしてラスト数秒。
焦っていた二年のパスを黒子がカットし、そのままゴールに向かう。
「いけぇ黒子!!」
コートの外で黒子を見ていた一花は、リコに一つ忠告をする。
『確かに黒子君は幻の6人目と呼ばれていました。…ただ、』
「…?」
『黒子君はパス回し以外…』
黒子がゴールに向かって一直線に走り、そのままレイアップを…
「勝っ…、」
ガボン…
決めたと思いきや、ゴールの縁に当たり得点とはならなかった。その様子を見た一年はガッカリし、一花はクスッと可笑しそうに笑った。
『パス回し以外、ほとんど素人並みなんですよ。ある意味すごいですよね。』
「………。」
一花の言葉に期待していただけに、その分落胆が激しいリコ。思わず黙ってしまっていた。
「…だから弱ぇ奴はムカツクんだよ。」
しかし、まだ試合は終わっていなかった。
黒子がシュートし損ねたボールを火神がキャッチし、そのままダンクでゴールに押し込む。
「ちゃんと決めろタコ!!!」
火神のプレイに黒子は確信したように微笑む。
その様子を一花はじっと見ていた。
『(テツ君、火神君…。)』