第6章 幻の6人目
試合開始のホイッスルと同時にジャンプボールでボールを奪った火神。
ガツン!!
そのままの勢いでダンクを決め、先制点は一年生に入った。
「おおっ!!?」
「うわぁ、マジか今のダンク!」
「スゲェ!!!」
火神の迫力あるダンクに部員全員が驚いた。
監督のリコも想像以上の逸材に少し戸惑っていた。
「(想像以上だわ…!!)」
『(あんな荒削りなセンスまかせのプレイであの破壊力…。それに昨日見たストバスの時より威力は増している。…なるほど、やっぱり彼なら。)」
一花はここで確信する。
彼はキセキの世代に匹敵する逸材だと。
それ故に怖かった。
…また同じ過ちが繰り返されるのか。
試合中だということも忘れ、少し苦しそうな眼差しで火神を見つめる。
「やったぜ、一花!」
すると火神は屈託ない笑顔で拳をこちらに向けた。
…いけない。また、悪い癖が出てしまった。
以前の仲間を意識するあまり彼の強さが不安になる。
だけど、彼は違う。
そして私も。
私はもう帝光バスケ部のマネージャーじゃない。
誠凛高校バスケ部のマネージャーだ。
私の目的はただ一つ誠凛高校バスケ部と日本一になる事だ。
「一花?大丈夫かよ。」
一花があまりにもボーッとしているため、わざわざコートの端まで走ってきた火神。
慌てて拳を差し出し
『ご、ごめん。ナイシュ、火神君!!』
「おう!」
差し出した拳を突き合わせる。
どこか懐かしい感触に自然と笑みがこぼれた。
「こらー!!火神ー!!なに一花ちゃんにベタベタしとんじゃー!!!試合に集中しろ!!」
どこかいい雰囲気の二人にリコの怒号が飛ぶ。
「っやべ…!んじゃ行ってくるわ。」
『うん、頑張って!』
弾かれたように走り出した火神を見て胸がキュッと締め付けられたのは気のせいだろうか。