第5章 Investigative
そうして『名前』が届け終わり厨房に戻るとチーフは急患として運ばれたとだけ他の従業員に言われた
何があったんだろう、過労?ストレス?
過労死寸前のチーフだったとは申し訳ないなあと思いつつ、
その日の業務を終えた『名前』は予め用意していた辞表と制服を事務所の机に置きそのレストランを出た。
…
そうして1週間がたった頃だった。『名前』はフラフラとした足取りで自室に入りデスクに潰れた。
だが夜の街として動く外はまだ明るい……いや明るくないことなんて殆どないが
自分の仕事用デスクには
最初に働いた四つ星レストランの実態を纏めた書類や、
同じように他のレストランでの様子を書き写したメモ
後シェフやその店のお客さんに聞いた話
それらを見合わせて共通することは……
『グランツィエ』という彼は 恐れの対象 だということ。
彼はどうやらこのグラン・テゾーロで、バックにつけた有名らしいマフィアの力で裏社会を牛耳っているらしい。
つまるところ、虎の威を借る狐 ということだ。
「まあ 原作 には一切でてきていないキャラクターなのがまだ幸いね」
これが原作に登場するキャラクターなら厄介だったが、
出てこないということは彼はこの世界において重要ではない。
__最悪彼は死んでも、いや生きても関係なくこの世界は物語通りに進むはずだ。
まあこの グランツィエ 以外にも同じように厄介な客は多い。
彼等もまた本編には登場しない。
とりあえずこのグランツィエを対処せねばならない。
この船の飲食店の状態を良くするにはそうするしかない。
後の問題はオーナーやチーフが悪い場合のみ。
それは対処は簡単だ。降ろすか異動させれば良いのだから。
「疲れて病院送りのあのチーフにはささやかな謝礼金をつけるとして、グランツィエ……ね」
しばらくは彼について調べなければ、明日からの予定を脳内で組んでいると
「__ほう、もうそんなに纏めたのか」
「わっ」
驚いて振り向くとそこにはテゾーロがいた。
何も言わずに入るなよと突っ込みたい気持ちを抑える
「ハハ、随分と長いこと部屋を空けていたな」
「……はぁ、どうされましたかテゾーロ様」
そういうと彼は意地悪そうに笑みを浮かべる
「挨拶に来ないから私が来たまでだ」
「挨拶って……1週間だけで?」
「何か問題か?」