第5章 Investigative
場所は変わってとある四つ星レストランへ
忙しなく動く従業員と多種多様なお客に『名前』は呆気にとられていた。
(す、すごいこれが現状……何もしなくても忙しいな)
「おい、止まるな!」
「!は、はい」
チーフに肩を叩かれ わ、 と驚きはっとする__そうだった今の私は奴隷の設定だった。
自分の身分をそのまま言えばきっとこの場を制する人達は普段の様子を隠してしまうだろう
それじゃ折角の現場調査も意味をなさない。
身分詐称はいけないことだとわかってはいるがまあその時は黄金帝のお力を借りさして頂こう。
厨房へいき『名前』はシェフから料理を受け取りボールに戻った
広いホールはお客の話し声がよく聞こえる。その横を笑顔でかつ忙しなく動くスタッフ達
このレストランでは天竜人の船でみたことがある奴隷が数人働いていた。
一見、働き手もそれを総括するチーフもマネージャーも問題は見られない。問題は無さそうに見えたが……
「おい、どういうことだ!」
得意の営業スマイルでお客様に料理を運んでいると、後ろで怒声が響いたのが聞こえた
振り返ると、客であろう男が怯えるスタッフの1人に対し怒鳴りつけている
「も、申し訳ございません……」
「何故こんなに遅いんだ!高い金を出してやっているのに!」
それは人手が追いつかない程混んでるのもあるけどアンタがきて注文してから数分も経ってないからだよ!と言いたいが、そんなことは言えるわけもなく
周りは あぁ、まただよ と言いたげな表情を向けていた
確かにその通り。
今日きてこのような客がくるのは初めてではなくもう8回目
こんなクレーマーに対応し、時間が足りなくなりつつあるのも事実だ。
「……ほんと、どこにいてもこういうのはいるもんなのね」
ため息をつき厨房へ戻る。
他の料理はどんどん届けられていくのにわざと取り残された あの 席の料理がしっかりと置いてあった。
無理もない。
あんな状況の席に持っていきたい人なんていないだろうし、巻き込まれたくないに決まってる。
どうするんだよとヒソヒソと声が聞こえた
……なにも対応していないのかしら、この四つ星レストラン
「ブラックリストにぶち込めっつーの……」
少し手荒に『名前』は取り残された料理を手に取った。