第5章 Investigative
「!ってダメだ、これからなのに」
はっとして『名前』は作業机に突っ伏した体を起き上がらせた。そう、やることはこれからなのだ。
本業は暫くは休止して……することはこの船内の仕事場の現地調査。
現地調査自体やろうとは思っていたが私の担当する事務作業が思いのほか膨大で、現地調査として私自身がちゃんとその場に向かうのは時間が足りず厳しかった。
だが今なら暫くは放っておいてもいいだろう。部屋に戻って1、2時間あればその間にきたものぐらいなら対処できる。
明日からは現地で実際に私もその仕事に取り組む。どれだけ危険でもいい。この船にいる奴隷のような扱いをされている人達が受け持つ仕事をとにかくしまくる。
そしてその場所それぞれの問題に対応……が理想だ。
ともかくテゾーロに少しでも青年時代ステラに影響を受けて裏の世界から足を洗い、真っ当な仕事をした時のことを少しでも思い起こして貰えればいい。
周りから順々にブラックからホワイトに変えてみれば少しは感化されないだろうか。っていうのが私の考えだ。
「……明日は飲食店だったかな。天竜人でコミュ症は治ったよね私……多分」
接客業は正直苦手だが、今までの経験を考えればきっと大丈夫だろう。
さてテゾーロの許可はとっていないが、仕事だといえばなんとかなる!……私、なんとかしてばかりな気がする。
「……っでも!これぐらいしなきゃだめだよね、うん。」
一瞬辞めようか考えたが自分を奮い立たせ気を取り直した。これは私に出来る彼への恩返しだ。
もし意味が無いとしても、とにかくやるだけやってみなければ考えたところで今はわからない。
『名前』はため息をひとつつき、顔を上げた
「__そういうことで、暫く部屋空けます。」
「……いや、どういうことだ」
場面は変わって、次の日の朝。
『名前』はテゾーロの自室へ向かい休職することを単刀直入に申し出た。
一方説明を受けたテゾーロは若干残る寝ぼけ眼を擦り頭を掻きながら私の話を聴いている。
真面目な顔で『名前』は終始説明していたが彼の全く理解していなさそうな顔に力が抜けた。
「……いやだから、現地調査です。1回くらいは私自ら行くべきでしょう?日にちは経ちましたが現地の状況なんて何も知りませんし」
「そんなこと……下のやつに任せればいいだろう」