第5章 Investigative
「……おお」
相変わらずここからの景色は凄い。私の表現力が足りないせいで文字で表せないが、ただ美しいでも素晴らしいわけでもない。
……ただただ暴力的な凄さが私の目に降り注ぐ。
金色に眩く光り暗闇は殆ど感じさせないこの世界。
ワンピースにはもっとほかの世界があるというのに、世界はこれだけではないかという気分にさえなってしまう。
__そんな、テゾーロが作り上げた桃源郷
「……こんな高いところから眺めてたら、みんな豆粒みたい」
人のような小さな無数の何かが右往左往に動く。怒声があちこちで響き、同じくらい歓声も叫びも聞こえる。
テゾーロがあんなに清々しいかった青年時代から変わってしまったのはこの景色も原因の一つではなかろうか。
まあ原因の殆どはステラなのはわかってるんだけど
でも彼はその一件でいくつか大切なことを見落としてしまった。
だから彼は今日も誰かを弄び奪い取っている。
「……皮肉ね。彼が1番憎んだ天竜人と同じことをしてるんだ」
この世界の『神』だといって人を陥れる。規模が違うとはいえ根本的には同じようなものだ。
__でもそんな彼だと私は知っているのに、つい彼は本当は違うんじゃないかと期待してしまう。
私が天竜人の奴隷だった時、彼は私を助けてくれた。
天竜人のあのクソ……じゃなくてチャルロス帝に皆がいる前で土下座させられて踏みつけられた時、テゾーロはそれを傍観せず止めてくれた。
彼は私を彼の自室に避難させ衣食を提供してくれた。
そしてその後天竜人の船を爆破し、ほかの奴隷を匿ってまでくれた。膨大な費用がかかったのは間違いないだろう。
あの日彼がふ、と笑みを浮かべながら言った言葉を思い出す。
『……あのショーはお前の為にした』
彼はそう言って軽々と私を救い出した。
「ずるいなぁ、ほんともう」
自分を嘲るように『名前』は小さく笑った。
そうして、彼のもとについた今も私を優位な立場にし、私の仕事を手伝ってくれている。
休憩時間に彼が仕事を邪魔しに来るのは目を瞑った上でだが……
私はわかっていた筈だった。
テゾーロは設定上『心の底では誰も信用していない』キャラクターだと、なのに。
私から見える彼はどうしても……そんなふうには見えない。
いや……
「違う。そうであって欲しくない……のほうが近いかな」