第5章 Investigative
タオルが巻かれた状態でもその蹄は主張し続けている。
彼に蹄があった場所が疼く。
じく、としたある筈の無い痛みを感じながらテゾーロは『名前』のほうに手を伸ばした。
それに気づき『名前』は振り返る。
「?」
「おい、こっちへ来い」
「え」
理解出来ず間抜けな声が出てしまった。困惑していると彼はじれったいのか舌打ちまでする。
だが 正直断れるなら断りたいし離れていたい。一定の距離感は欲しい。
「なんでですか」
「……勘違いするな、肘置きにお前を使うだけだ」
彼の威圧感を込めた声にこれ以上逆らってもいいことは無いと察した『名前』はすぐに彼の近くに行くことにした。
人間を肘置きに使うだなんて流石は黄金帝だわ……と思いながらも彼女はテゾーロの足の間に三角座りで座った。
そうして彼は『名前』名目上肘置きとして使った。が、どうみても彼が後ろから『名前』に抱きついている。
「(うっわ テゾーロ見た目からしてわかってたけど……重い)」
明日は肩がこるな。なんのための風呂なんだろう。
でも、なんとなく……安心感はある。けどこの体勢どう考えても彼にとってはキツイんじゃなかろうか。
「……あの、その体勢寧ろキツくないですか?」
「んん……」
ダメだ会話にすらならない。
黄金帝はその異名通りの威厳も残虐な行為もあるが、たまにそれらしくない行為をする。
怖いというよりは扱いやすいから私にとっては楽だけど、でもこんな彼を私は映画では見たことがない。
こんな彼がステラに恋していた時期はあんなに好青年だったというのに……
と、考えていると 彼の指が つ、 と私の背中をなぞった。突然の感覚にぞわりとして体が震える。
「っわ」
「……の……が」
「?」
続けて彼が何かを言ったのはわかったが上手く聞き取れない。一体何なんだろう。
聞きたいがまた背中をなぞられてしまい、こしょばくてちゃんと話せない。
「なっ……んです…っか?!」
「……あぁ、いや コレ がな」
「コレ?__あぁそれですか」
彼の触れている付近にある竜の蹄を思い出す。
そうか、彼も奴隷だったから見ちゃうと気になってしまうのも無理ないか。
「よく耐えれたな、あの痛みに」
「あぁ、もう死ぬかと思いましたよ。アレ本当に痛いですよね」
「ハ、まるで他人事のように言うな」